04.甘い囁き
みんなとの生活にもかなり慣れてきて、私は毎日ドキドキしながら楽しい日々を送っている。
今日はみんなの撮影現場に同行して、肩書きどおりお世話係としての仕事をしている。
といっても軽食や飲み物の準備とか、汗を引かせるためにうちわで扇いだりとか、暇だと連呼する彼らを構ってあげたりとか。
仕事内容はびっくりするくらい労力を使わない。
今楽屋の中には私とユノくんだけ、ほかのメンバーやスタッフはみんな撮影スタジオにいるからだ。
何で私たちが二人っきりなのか、大して理由はないと思うけど、さっきからユノくんからの視線が気になって仕方がない。
「…あの、どうしたの?」
「ん?」
「さっきから見られてるようネ気がして…自意識過剰かな、私。」
「いや、ずっとさんのこと見てるよ。」
「…なぜ?」
もうすぐスタッフの一人がユノくんを呼びに楽屋に訪ねてくるだろう。
ユノくんの撮影の順番は最後、彼の撮影が終われば今日はもう宿舎に帰れる。
撮影用の衣装に身を包んだユノくんは、とてもリラックスした感じでソファに腰掛けていた。
「さんは、今彼氏とかいるの?」
「いきなり、どうしたの。」
「気になってしかたなくて。」
私の彼氏の有無がそんなに気になる事柄だとは、到底思えない。
むしろこっちがあなたたちに聞きたいくらいですが、という言葉を飲み込んで、どう返そうかと少し悩む。
別に隠すようなことでもないし、正直にいませんと言えばいいだけなんだけど、そんなに気にされちゃうとなんだかこっちも言いづらい。
かといって面白い、ユーモアに富んだ答えを返せるわけでもないので、仕方なく「いないよ。」とだけ言ってみた。
するとユノくんは安堵の表情を浮かべて、私に白い歯を見せて笑った。まぶしい。
「よかった、俺…さんのこと、すっごい好きなんです。」
「失礼しまーす、ユノさん、順番来ました。スタジオにお願いしまーす。」
「はい、今行きます。」
口をポカンと開けたまま、私はユノくんを見つめて出て行く姿を見送る。
廊下に出かけたところでユノくんは私に振り返り、
「ただそれだけ伝えたかったんです。行ってきます。」
とだけ言い残してスタッフとともにスタジオに行ってしまった。
バタン、と扉の閉まる音だけが寂しく室内に聞こえ、私は今言われた言葉を再び思い出していた。
(彼氏の有無を気にしてたのって、やっぱりそういうことだったのか。)
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