10.水も滴る…?






さん、とりあえずあそこまで走って!!」





天気予報では、今日は曇ることはあっても雨は降らないって言ってたのに。




チャンミンくんと二人でデパートに来た帰り道、暗雲が立ち込めたと思ったら急に大雨に降られてしまった。


傘の用意もなにもない私たちは、荷物を抱えながら街を全力疾走している。



チャンミンくんが指差したのは、こじんまりとしたレトロなカフェだった。





びしょ濡れになりながら二人で店内に入る。



中はほんのり暖かくて、カップを拭いていたマスターが私たちを見るや否やすぐにタオルを手渡してくれた。


丸眼鏡をかけた優しそうなマスターは、「今温かいものでも淹れますね。」と笑った。





「びしょ濡れになっちゃったね…どうしよう、雨止むかな…」


「この調子だと、しばらくはこのままでしょうね。」





ちらりと横目でチャンミンくんを見る。


髪の先から雫になった雨水がぽたりと落ちて、床に染みを作った。



水分を含んだ髪の毛が肌に張り付き、それをチャンミンくんが邪魔そうに掻き揚げる。


少し眉間にしわがよったその顔にもドキッとしてしまった。


水も滴るいい男とは、まさにこのことだ。




「どうします?迎えを――」


「…チャンミンくん?」




言いかけの言葉は続かず、チャンミンくんは何かを考えた顔で私をじっと見下ろしている。



ぐちゃぐちゃになった化粧を見られているんだと、居たたまれずに俯くとチャンミンくんが頬に手を添えてきた。


私と目線を同じ高さにするようにしゃがむチャンミンくん。


目を合わせるのが恥ずかしくて、無意識に目を逸らしてしまった。





さん。 キスしてもいいですか。」


「…え、チャンミっ」





体は冷えているのに重なる唇だけが熱を持っていて、その熱は顔全体へと広がっていく。




チャンミンくんから滴り落ちる雨水が私の体に当たる。



いつの間にか抱きしめられている体には水分を含んだ衣服が張り付き、チャンミンくんの体温がダイレクトに伝わってきた。









(突然のことに、わけがわからなくなる。)
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