11.溜息
後ろから抱きしめられたままソファに拘束されて、早十数分が経過していた。
ジュンスくんが溜息をつくたびに肩口に当たり、くすぐったさを覚える。
どうしたの?と聞いてもなにも答えてくれないから、私にはどうしたらいいのかわからない。
解決策を見つけられないまま時間だけが過ぎていくのかと思うと、時間がもったいないなと思う。
「さん、ボクたちの気持ち、知ってるよね?」
私もつい小さな溜息がでそうになった矢先、ジュンスくんがぼそっと漏らした。
しらばっくれるわけにもいかない、反応しにくい話題だ。
ここ最近、メンバーからのスキンシップはかなり増えたなと思ってたし、チャンミンくんからは思いがけないこともされた。
言葉で好きだと言われこともある。
だけどみんなが私に対して恋愛感情を持っているとは思えなかったし、どこかでからかわれているだけど自己完結して悩まないようにしていた節があった。
それに、特別な感情を持つことはあってはならないことだと、会社にバレたらまずいっていうのもあるし。
好意を伝えられて嬉しい気持ちはあっても、それにどう返せばいいのかわからない。
ましてや5人からだなんて。
でも断りきる勇気もなくて、だからあの時チャンミンを突き放すこともできなかった。
とんでもなくひどい女だ、私。ひどくて卑怯で、自分に都合よく過ごしている。
「…ジュンスくんの溜息も、それに関係してること?」
「そうだよ。ボク、さんが好きすぎて辛いんだ。」
きちんとした答えをださなければ、と思う反面、そんなことしてはいけないと思う自分がいる。
それに、みんなのことは同じくらい好きだし、正直誰か一人にっていう決断なんてできる気がしない。
「私、最低な女だよ、だから――」
「そんなことない!あのね、さん。みんな、さんのことが好きなんだ。」
「……。」
「だから、答えを一つに絞ろうとしなくていいよ。さんも、ボクたちのこと嫌いじゃないよね?」
「…うん。」
「身勝手かもしれないけど、そしたらボクたちみんなに応えてくれれば、それでいいから。」
諭すようなジュンスくんの声。
一対一であるべきはずの関係性は必要ないと、私に訴えかけてくる。
体を反転させられて向かい合う体勢になると、ジュンスくんは真剣な面持ちで口を開いた。
「ボクたち、さんが全員のこと同じくらいで好きでいてくれてること知ってたんだ。だから迫っても決断はなかなか出てこないだろうって。
で、みんなで話し合ったの。ボクたちの望みはさんと一緒にいること、だったらないものねだりする必要なんてないねって。
もしさんの気持ちが誰かに傾いたら、そのときはそのとき。それまでは全員でさんを愛して、愛されようって決めたんだ。」
世間にはわかってもらえないかもしれないけど、これがボクたちの愛の形かなって。
そういうとジュンスくんは、また溜息をついた。
吐き出された息は、少し震えていた。
「さん、今はボクだけを見て。」
腰に回された腕にぐっと力が入る。
必然的に体が密着して、私たちの距離が縮まった。
「好き、さん。」
触れるような口付けから込められた愛情が伝わってくる。
いろんなしがらみや倫理的な問題もあるけど、そんなのすべてないものにしてジュンスくんのキスを受け入れた。
みんなを愛して、みんなに愛される。
世界でただ一人、私だけの特権。
(こんな最低な私を愛してくれるみんなが愛おしい。)
---------------