14.意外な一面
監督のカットの声に、みんなが一斉にダンスをやめた。
スタジオ内に響いていた曲も、回されていたカメラも止まる。
「はあ…あっつ……」
「お疲れ様。はい、水分しっかり補給してね。」
ミュージックビデオのダンスシーンの撮影は、いろんな角度からカメラを回して何度も撮影するから疲労も溜まりやすい。
みんな口々に、「今日の撮影はしんどい」と言っている。
保冷剤をタオルでくるんだものを渡して体を冷却するように言う。
するとチャンミンくんが私の隣まで椅子を持ってきて、頭を肩に乗せるようにもたげてきた。
珍しく今日は甘えているらしい。
「はあぁー…ほんとに暑い。」
「首の後ろ冷やすと気持ちいいよ。」
「さん、今だけ手繋いでいいですか?」
周りのスタッフも、「今日のチャンミンは甘えっ子だ」なんていいながらうちわで扇いであげている。
確かに甘えたような目をしてこっちを見上げている。
甘えている犬みたい。
普段はこんな姿見せないのに、いったい今日はどうしちゃったんだろう。
「さんの手って、可愛いです。」
「可愛い?どこがー?」
「ちっちゃくて、守りたくなる。」
チャンミンくんの上目遣い。
かなり破壊力がある。
撮影再開の声がかかって、みんな準備をし始めた。
なのに、チャンミンくんだけ動こうとしない。
いつもまじめなのに、今日はほんとうにどうかしちゃったんだろうか。
握られていた手を引こうとすると、それを先読みしてかぎゅっと強く握られた。
「僕を一番に頼ってくださいね、さん。」
(甘えた顔も、センチメンタルな声も、いつもは見させてくれないから、)
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