、なんだその丈の短いスカートは。風邪ひくぞ。」




「ちゃんと下にタイツ穿いてるから大丈夫ですー。」




「…もしかして、それで買い物に行くのか?」




「悪い?」




「悪い。スカートを穿いていくならもっと長いのを――」




「うるっさいなぁ、こんくらい別に普通だよ!街行く女の子見てみなよ、この長さは全然普通なの!」




「タイツを穿いてれば安全だと思ったら大間違いだぞ。最近は変質者が多いんだから――」




「(あーもー!うるっさい!!)」








うちにはこんな、うるさい兄貴がいます。








、外でユチョンとジュンスが待ちくたびれてると思うよ?」




「(ジェジュンオッパ、ナイスフォロー!)うん、行ってきまーす!」




「あ、!ちょっと待ちなさい!」












うちのオッパを紹介します。












私には、5人のお兄さん――オッパがいます。






厳しいけど優しいお母さんみたいなジェジュンオッパ。



何から何まで結構ウルサイ、ユノオッパ。



いつでも私の味方(ちょっとシスコンの気ありの)、ユチョンオッパ。



小さい頃からの私の遊び相手で同世代の男の子みたいなジュンスオッパ。



最後にこの5人の中で一番大人びてる(けど可愛いところもある)チャンミンオッパ。







私が生まれてまもなくして両親が他界してしまったため、私はこの5人に育てられてきた。



私たち6人は全員、本当の兄弟じゃないんだけど、そんなこと気にも留めずに本物の家族のように日々を過ごしている。




明るく楽しく面白おかしいオッパたちに囲まれて成長した私、今では立派な華の女子高生生活をエンジョイ中。










「ユチョンオッパ、ジュンスオッパ、お待たせ!」



「遅い!早く車乗れ、行くぞ!」



「ユノヒョン、心配性だもんね。いろいろ言われたでしょ、。」



「うん。すっごい言われた。」









そんなわけだから私も一応、思春期というものを迎えている、と思う。





私をここまで育ててくれたオッパたちにはもちろんものすごく感謝してる。



私を心配して、だからユノオッパがあそこまで口うるさくなってるっていうのもわかってるつもり。





でもね、正直……ちょっとうざかったりもするわけで。






最近、ほぼ毎日こういうやり取りを繰り返した結果、ユノオッパとは気まずくなってしまった。




というか、私が一方的にそう感じてるだけでユノオッパはなんとも思ってないかもしれないけど…。









「よし、出すぞー。、ジュンス、オッケー?」




「「オッケー。」」




「それじゃあ、出発進行ー!」







私のことを心配してくれるって言うのは嬉しいけど…





でもやっぱり、少しは乙女心ってものをわかってほしい。









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「ジェジュン…、あのままの格好で出てったぞ。」




「平気でしょー。ユノも気にしすぎだよ。本当に最近の女の子はあれくらいのスカート穿いてるし――」




「変な奴に襲われたりしたらどうするんだよ…あんな華奢な身体じゃ、抵抗だってできない。」




「心配しすぎだって。ユチョンとジュンスもついてるんだから。」








眉間にしわを寄せて、まだぶつぶつとの格好に不平をもらすユノ。



対照的に「コーヒー淹れよっか。」なんてお気楽なジェジュン。





端から見ていると、本当に子を持った夫婦のようである。








そこへ、







「ユノヒョン、またと言い争いでもしたんですか。」







チャンミンが分厚い本を片手にリビングにやってきた。






飽きもせずによくやりますねぇ、と苦笑いをしつつ、ユノの反対側のソファに腰を下ろす。




そして手に持っていた本をペラペラとめくり、目を配らせた。






文面を目で追いながらチャンミンは言葉を続ける。








「ほどほどにしておかないと、そのうちから愛想つかされますよ。」




「ただ心配して言ってるだけなのに、か?」




くらいの子は難しい年頃ですからね。放っておくのが一番いいかもしれませんよ。」




「…昔はよく、オッパ!オッパ!って可愛かったのになー…。」







遠くを見つめるような目をして、過去を回想し始めるユノ。




つられてジェジュンとチャンミンも、何年も前のことを思い出す。










がうちに来てしばらくはてんてこ舞いだったよねー。」






ジェジュンが苦笑いしながら、コーヒーをテーブルにおいてユノの隣に腰掛けた。




ほんと大変だったよね…、というジェジュンの呟きに、2人はうんうんと首を振る。







「食事からオムツの替え方まで、ネットで調べたりしましたよね。」




「いきなり泣き出されたりして、本当に大変だったよな…。」




「寝てるときが一番かわいい!ってジュンスが言ってたの覚えてる?」




「ああ、言ってましたね。」




「今思えば酷い台詞だけど、あの頃は本当に大変だったからな…。」








がやってきたときのことを思い出しては、みんなで苦笑い。






いきなり5人で赤ちゃんを育てることになったあの日から、もう十数年も経っている。




何度も迷って悩んで、時にはみんなで衝突しあったりもして、苦労に苦労を重ねてきた。





それでも、をまるで我が子のように守り、育ててきた5人。




兄妹のような関係ではある彼らだが、5人にしてみればむしろ、”自分達はの親”というような感覚である。










「もう、は子供じゃないんだよね。大人じゃないけど、子供でもない。」







まるで自分に言い聞かせるように、噛み締めるようにジェジュンが呟いた。





言葉に出して、ふと寂しくなってしまうのはなぜだろう。






いつまでものことを守っていく、という5人の意思に変わりはない。



それでも、昔のように手をかけ続けなくてはいけないというわけではない。





彼女は成長したのだ。



一歩ずつ、大人へと近づいている。




そうやって、は5人の手から離れていく。親の元から巣立つ小鳥のように。









「なんか…そう考えると、寂しいな。」



「別に今すぐが出て行くってわけでもないのに…変な感じですね。」



「成長を見届けるって、嬉しいのと同時に寂しいものだからね。」



「…俺、に愛想つかされないように気をつけないといけないな…。」










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、買い忘れはない?」



「うーん…大丈夫だと思うよ。ジェジュンオッパからもらったメモのものは一通り買ったし…。」



「もうオッケーか? 、服とか下着とか、見に行かなくていい?」



「ユチョンオッパのヘンタイ。目輝かせながら聞かないでよね。」







重い荷物はユチョンオッパとジュンスオッパに持ってもらって、私は本当に軽いものだけを持って駐車場に向かう。




ジェジュンオッパたちから頼まれた雑貨や食品は意外に量があって、3人できて正解だったと思う。








「さっきチラッて見たんだけど、カワイイ下着があってさー…、着たりしない?」







「…はい?」



「ユチョンが持ってる紙袋…それ、もしかして…」



「ピンポーン、オレが一目ぼれした下着、上下セット!カワイイしに着てもらいたくて買っちゃったー。」



「はあぁっ!? オッパ、な、なんてもん買ってんの!っていうか、サイズ、サイズ合ってなきゃ買っても意味ない――」



「サイズなら大丈夫。干してある下着見て下調べしてきたからっ。」







バッチリ!と、親指を立ててウインクをしてきたオッパの頭を軽く引っぱたく。





妹の下着のサイズを盗み見て、カワイイから着てもらいたいと思って買った、なんていう兄が一体この世に何人いるんだろう。



セクハラだよね、これって立派なセクハラだよね。





下着だけは、オッパたちとは洗濯も、干す場所も別々にしてたのに…。




私のかわいい(?)乙女心は、うちのオッパたちにはわかってもらえないのかしら。








「ユチョン…よく、女性下着コーナーで…1人で買い物、できたね…。」



「そりゃあ、カワイイ妹のためだし。ちょっと、恥ずかしかったけどな〜…。」



「……。」







ウキウキしながら、持っている紙袋に何度もニヤニヤするユチョンオッパ。




黙ってればイイ男だと思うんだけどな…



中身がこんなヘンタイだと、近寄ってくる女の人も近寄らないんじゃ…








「ユチョンオッパ、そんなんだから彼女いないんだよ…。」



「ボクもそう思う…。」



「ん? なんか言った?」









ジュンスオッパと同じタイミングで溜め息をつく。



それを合図にしたかのように、私のケータイがけたたましくなった。





この着信音はオッパたち用の…




そこにはユノオッパの名前があった。








「…も、もしもし?」







家を出てくる前のやり取りのこともあって、私は何ともいえない変な声で電話に出た。



オッパに対してはちょっと怒ってもいるし、でもなんか罪悪感みたいなのもあるし、戸惑いもあるし。




いつもの私らしくないな、なんて思いながら恐る恐るユノオッパの言葉を待つ。








『…あ、あー…か?』



「……うん。」







あれ、ユノオッパもなんか変。




珍しく、どもっちゃったりして。



か? なんて確認したりもして。





何かあったのかな。いつものユノオッパじゃない。








『あー、その…買い物は?終わったか?』



「う、うん。今からオッパたちと、帰るとこ…。」



『そ、そうか。うん、ならいい……あ、あのな。』



「ん?」







お互いに、変。




なんかリズム崩れる。



今までの私とオッパじゃないよ、これ。




どうして?



私、無意識的にオッパに対して申し訳なく思ってるのかな…







ー、どうした?」



「ユノヒョンかジェジュンヒョンか、チャンミンからの電話でしょ?」



「にしては、なんかオカシイよな、。」



「うん…。」







ユチョンオッパとジュンスオッパに顔を覗き込まれると、別に焦る必要はないのに変に焦ってしまう。








「え、別にっ、なんでもないよ。それで?なに、ユノオッパ。」




『……』




「オッパ? もしもし、聞こえてる?」




『…にって、プレゼントを持ってきた男がさっき、来たんだけど…』




「ぷ、プレゼント? ……あ、あー…。」




『……とりあえず、いいから…すぐに帰ってきなさい。』








ユノオッパはそういうと、一方的に通話をきってしまった。




切る直前のユノオッパは、明らかに不機嫌で…ちょっと焦ってた気がする。






めんどくさいことになりそう…。







「何、プレゼントって。」



の誕生日はまだまだ先でしょ?」



「ユノヒョン、ボケ始めたとか?」



「ユチョン、そこまで言ったらかわいそうだよ。」





「く、クラスのある男子にね…ちょっと、好かれてるみたいで――」





「はあ!? 何、好きって、ソイツがのことを!?」



「そ、そう――」



「ソイツがにプレゼント? なんで?付き合ってるわけじゃないんだろ?」







ユチョンオッパが迫り来るように聞いてくる。



ありえねー、とか、絶対に釣り合わない!とか、その男子の顔を見たこともないのにブーブー文句をたれている。




こんな公の場で、オッパのシスコンぶりが発揮されるとは。







、絶対フるんだぞ、いいな!」




「…(何でユチョンオッパにそこまで言われなきゃいけないの…別に付き合う気もないけどさ)」




「…で、、ユノヒョンはなんて?」






ジュンスオッパが、ユチョンオッパと私の間に割り込むようにして聞いてくる。






「すぐ、帰ってこいって…。」



「そっか。じゃあ帰るしかないね。ユチョン、すぐに帰るよ。」







ジュンスオッパに手を引かれて、私とオッパたちは足早にデパートを後にする。






家に帰ったら、今よりも絶対めんどくさいことになるのになー…。





ユチョンオッパはずっとぶーたれてるだろうし、ユノオッパはユノオッパでうるさいだろうし…。




考えただけでもめんどくさいなー。








「ほら、早く乗って!」






ユチョンオッパに急かされて、しぶしぶ私は車に乗り込む。




私にとってはなんでもない男子の存在が、オッパたちにとっては”悪い虫”とかになっちゃうんだ。



ある種の被害妄想のせいで。




その被害妄想に巻き込まれに帰るようなもんだよ。








!」



「…なに? ユチョンオッパ。」



「あの下着は外出時は身に着けちゃダメだからな。プレゼント野郎と会うときなんて、もってのほか――」



「ユチョン!ちゃんと前見て運転してよ、危ない!!」



「…はあ〜…。」











うちのオッパは、明るく楽しく面白おかしい…少々ヘンタイなオッパです。








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2010.11.20

佳菜さんから頂いたリクエスト、兄弟ストーリーです。
10ヶ月もお待たせしてしまいました…本当にすみません!><

この話は、ヒロインを小さい子にするのか、ある程度育った子にするのかですごく悩みました。
悩みましたが、結局は思春期の女の子…なかなかに成長してる子になりました(笑)
母性本能がくすぐられるお話、ということでしたが…くすぐれてますかね?
回想ストーリーだったらくすぐられたかな。

なんにしろ、私はゆちょんをなんだと思ってるんでしょうね。すみません。

だいぶ遅くなってしまいましたが、この小説を佳菜さんに捧げます!
リクエストありがとうございました^^
書いてて楽しかったです。