コーヒーを飲んだ後のチャンミンとはしばらくキスしたくない。
何の前触れもなく、突然そんなセリフがの口から飛び出した。
それまでスマホに向けていた視線を彼女のほうにやり、それから目の前に置かれたカップに目を移す。
当のチャンミンはまさにコーヒーを飲んでいる真っただ中だった。
「いきなり何?」
「だから、コーヒーを飲んだ後のチャンミンとは――」
「それはさっき聞いたよ。」
隣に座る彼女はスマホゲームに夢中だとばかり思っていたのに、気づけば画面は真っ黒になっていた。
しかたなくチャンミンもスマホをテーブルに置き、見せつけるようにカップを目の前に持ち上げる。
「僕、今まさに飲んでるんだけど。」
「うん。だから言っておこうと思って。」
「いきなりどうして?」
ごくり、一口流し込む。
は一瞬ためらったようにチャンミンの手元を見て、先ほどの言葉の理由を話し始めた。
「私、コーヒー自体は嫌いじゃないんだけど、独特な後味が苦手なの。」
「……渋みってこと?」
「うん、それもあるし……口の中に残る感じも、そうだし。」
お互いに目を見つめあいながら、無言の時間が流れる。
先に目をそらしたのはチャンミンで、軽く息を吐くと数秒だけ目を閉じた。
やるなと言われるとやりたくなる、それが人間というもの。
「。」
「うん?」
「今まで僕、コーヒー飲んだ後にキスしたことあったっけ?」
「……たぶん、何回かは。」
「でもいつもしてたわけじゃないよね。」
「そうだね。」
ゆっくりとした動作でに顔を近づける。
チャンミンの瞳をまじまじと見つめながら、ワンテンポ遅れたようにが腰を引いた。
すかさず背後に手を回し、距離が開くのを制する。
「駄目って言われると、やりたくなるのが僕の性格なんだよね。」
「えっ、チャンミンそんなだったっけ?もっと真面目でちゃんとしてる――」
「普段はそうかもね。に関することは別。」
キスしてたら後味にも慣れるかもよ?
そう続けた言葉の後に、流れるような動作で唇を重ねた。
固まってしまったをゆっくりと抱きしめながら、頭の片隅で苦笑いをしながら。
本当はコーヒーなんてそんなに好きじゃないのに、の前ではいつもかっこよく見せたくてブラックにして飲んでたんだ。
年甲斐もなく、のことになるとついつい見栄っ張りになってしまう自身に照れくさくなりながら、それを隠すようににキスを降らせるチャンミンだった。
背伸びしてブラックコーヒー