「。」
どこからともなく、柔らかい声音がぼんやりと脳内に広がる。
ジェジュンの呼びかけに目を覚ましたは、普段よりずっと緩やかにまぶたを持ち上げた。
とろんとした表情のまま目線だけを動かし、少しだけ眉を下げて微笑むジェジュンの姿を捉える。
「ごめん、いつのまにか寝ちゃってた……」
そう発した声の力のなさに、自分で違和感を覚えながら上半身を起こす。
いつの間にか掛けられていたらしい、ジェジュンのニットカーディガンをたたみながら眠りに落ちる前のことを思い出す。
ジェジュンの家に招かれ、手料理を振る舞ってもらい後片付けを手伝おうと立ち上がると、やんわりと断られ。
仕方なしにソファにもたれながら、バラエティ番組を見ていたところまでは記憶がはっきりしている。
そこで寝入ってしまったんだとばつが悪そうにジェジュンを見つめるに、大きな掌がゆっくりと近づいた。
その手は有無を言わせず、ソファから立ち上がろうとするのを制して、の額に優しくあてられた。
「ねえ、具合悪いんじゃない?」
額に当てられた掌の心地よさに、思わず目をつぶる。
熱すぎず冷たすぎず、程よい体温が直に伝わってくる感覚に再びまどろんでしまいそうになる。
そんなを見て、ジェジュンは思案する顔を数秒見せると、「ちょっと待ってて。」と離れていってしまった。
指摘されてからようやく自覚症状が出てきたらしいは、座っていた姿勢からずるずると倒れると再び横になった。
先ほどの声に力がなかったのもそのせいか。
言われてみれば悪寒がする気もするし、頭がぽーっとしている。まぶたが重い。
いつから体調を崩していたのか、そんなことよりもジェジュンの家に病原菌を持ち込んでしまったことが申し訳ない。
いろいろな考えが頭の中をぐるぐると周るが、思考力が落ち始めてきたらしく無意識のうちにまぶたが下りていた。
「、おまたせ。」
ジェジュンの声にハッと意識が戻る。
いささか重たい体を肘で支えて起き上がろうとすると、ジェジュンの腕が支えるようにしての背を抱いた。
間近で漂ういとしい香りに、は浸るように目をつぶる。
このまま甘えて抱き着いていたい。
考えるよりも早く気怠い体が動き、ジェジュンの背に手を回していた。
力なく、しかし縋るような雰囲気の彼女に、ジェジュンは照れつつも苦笑いをこぼす。
「あ〜、これは完全に具合悪いね。明日朝一で病院行かないと。」
とん、とん、と一定のリズムでの背中を優しくたたく。
子どもをあやすような動作だが、今はそれがとても心地いい。
柔らかい振動とジェジュンのほどよい体温は、徐々にの意識を遠ざけていく。
「これ、飲ませても意味ないか……ちょっともったいないなー……」
ぼそりと呟くジェジュンの声は果たしてに届いたのか。
テーブルの上にはお手製のホットワインの入ったマグカップ。
立ち込める湯気からはほんのりと甘酸っぱい香りが漂う。
一口分を口に含んだジェジュンは、眠りに落ちる寸前のの頬に手を添えると優しく口づけた。
ぎこちなくも口移しで与えられたホットワインに、はピクリと体を揺らす。
「なんか、いたずらしてる気分。」
そう言って苦笑いをするジェジュンは、二口目と言わんばかりにマグカップを手に取った。
内緒のホットワイン