この時期が来た。
「。」
名前を呼んで振り向く彼女の、袖元。
小柄で丸みのある手が隠されて、見つめていると包み込みたくなる。
萌袖
ソファでくつろぐの後ろに半ば無理やり入り込み、後ろから抱きかかえてソファに腰掛ける。
密着した僕にわたわたと慌てる。
付き合ってからもうそれなりに経っているのに、こういうことに慌てるところが可愛いなと思う。
「なに、なになに。」
つい最近整えたと言っていたのパーマは、動きに合わせてふわふわと揺れる。
染めるなら僕と同じ色にしてという注文はきちんと聞き入れられていて、艶めく茶色の髪からは甘い香りが漂ってきた。
雑誌と僕の顔の間で忙しなく視線を動かすはまるで小動物だ。
「え、」
の手を取り、じっと眺める。
白くて小さくて柔らかい手。
桜貝のような血色のいい爪。
すべすべとした肌触りは、男の僕にはないもの。
それらを半分ほど隠しているグレーのカーディガンのおかげで、の手は形容しがたいほど愛くるしく思える。
「可愛い手。」
ボソッと呟いた僕の言葉に、は瞬きを多くしてる。
照れ隠しをする時のの癖だ。
照れながら喜んでいるらしい。
本当、可愛い。
「もう少しこのままでもいい?」
「え、ずっと手眺めてるの…?」
「んー、手っていうか……」
を眺めてたいんだけど。
そう告げた途端、眉間にしわを寄せながらも顔を赤らめるが本当に愛おしくて、思わず額にキスをしてしまった。
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2015.9.2
そんな季節ですね。