何度も何度も言わせないでよ。
いい加減頷いてくれたっていいじゃない。
もうこれ以上待つなんていやだよ。
「ねえ、結婚しようよ。」
君が思うより、君はずっと素敵な人
「…またその話ですか。」
「、ちゃんと聞いて。真面目な話するんだから。」
は、結婚の話題を持ちかけるといつもテンションが下がる。
そして、誰の目から見てもわかるくらいに不機嫌になる。
今だって、淹れたてのコーヒーを飲みながら、眉間に軽くしわを寄せてこっちを見ている。
何も悪いことしてないのに、何で僕が睨まれなきゃいけないんだろう。
理不尽だよなぁ、と思いつつも、もうに睨まれることなんて慣れちゃったから気にしない。
僕もの目を見つめて、真剣なんだということをアピールする。
「僕が初めて結婚しようって言ってから、もう3ヶ月。ずーっとはぐらかされてきたけど、今日こそは答えてもらうからね。」
「……。」
「僕と結婚したくないなら、はっきりそう言って。曖昧なままなんて、僕はいやだから。」
僕が言い終えると、は小さく息を吐いて眉間から力を抜いた。
柔らかくなった目つきだけど、顔には困惑の表情が浮かんでいる。
コーヒーに映る自分と見つめ合って、僕に対する言葉を選んでいるようだった。
僕はやきもきしながらの言葉を待っている。
これまで何度となくはぐらかされてきて、の気持ちを探ろうにも探れなかった。
結婚の話題を持ち出しただけで不機嫌になるくらいだから、しつこく返事を聞くことができなくて。
でも、もう限界だ。
僕は長い間待って待って、待ってきたんだから。
今日こそは、きちんとした返事を聞かないと気がすまない。
に拗ねられようとキレられようと、今日こそは返事を聞きだしてやる。
「……。」
「……。」
この3ヶ月間、かなりの準備をしてきたんだ。
挙式を上げる場所を探したり、誰を招待するか考えたり、新居のことも考えた。
自分の仕事のスケジュールに被らないようにするためにはどうすればいいのかとか、そういうことも考えてきた。
この3ヶ月間、無駄に返事を待っていたわけじゃないんだ。
僕なりにできることをやってきた。
がなんて答えてくれるかなんて、僕にはわからない。
返事が「ノー」だったら、それこそ僕はバカだ。
一人で勝手にとの結婚生活を妄想して舞い上がっていた、バカ。
周りから笑われてもおかしくない。
だけど、それだけ僕は本気なんだ。
一人で舞い上がっちゃうくらいこの先のこと考えてるし、笑われたって構わない。
一世一代の、僕のプロポーズ。
に対する、真剣な僕の気持ち。
周りがどう思うかなんて関係ない。
そんなの、気にするだけ無駄だから。
「…ジェジュンは、後悔しない?」
「するわけないでしょ!なんでそういうこと言うかなぁ…!」
「なんでって…だって、私なんかと結婚したら、いい人に巡り会えるチャンスがなくなっちゃうじゃんっ。」
「はいつも自分のこと卑下しすぎだよ!」
「じ、事実だもん!」
「いい!? 僕はだからプロポーズしたの!だから大好きなの!他の人と比べる必要なんて、ないの!」
僕の言葉になのか、勢いになのか、圧倒されたらしいは言葉を詰まらせる。
いつも自分のことを貶す。
僕がどれだけが好きで、大事に思っているのか、ちっともわかってない。
僕にはしかいないんだってことも、わかってない。
「僕に釣り合わないとか、僕にはもっといい人がいるとか、それ全部の思い込みだからね!」
「そんなこと――」
「くだらないの思い込み!そうやって自分のこと貶して、何が楽しいの!?」
「……。」
「何度も言ってるけど、僕は他の女の人なんてどうでもいいの。この先会う人とか、関係ない。」
「…っ、でも…」
「、僕と結婚したくないならはっきりそう言って。はっきり言われなきゃ、諦めつかないよ。」
の目に、うっすらと涙が浮かぶ。
零れ落ちる前に拭ってしまおうと思って手を伸ばすと、それを悟られたかのように一滴、の目から涙が零れ落ちた。
それを境に、どんどん涙が溢れては零れ落ちてきた。
拭っても拭ってもキリがない。
「…、僕は別に怒ってるわけじゃないからね。」
「…っ、うそつき…。思いっきり、怒ってたじゃん…。」
「に、自分のこと悪く言ってほしくないんだよ。謙遜も度を過ぎると、聞いてるこっちが不愉快になるんだから。」
「…ごめん、なさい。」
「うん。」
を抱きしめて、子どもをあやすようにしていると、徐々に涙が止まり始めてきた。
それを確かめてからの両肩に手を置いて、もう一度に向き直る。
このまま顔を近づければキスできちゃう、そんな至近距離で。
「返事、聞かせて。」
涙で濡れたの瞳が、ゆらゆらと揺れる。
そんな彼女の瞳には、の口から発せられる言葉を、今か今かと待つ僕が映る。
「じぇ、ジェジュン…。」
「うん。」
「…私、いいお嫁さんになれるよう…努力、します。だからっ…」
「…うん。」
のその言葉を聞いただけで、頬の筋肉が上がってしまった。
隠そうにも隠せない僕のにやけ顔。
そんな僕を見ながらも、は笑うことなく、困ったような照れた顔で必死に言葉を紡いでいく。
「いい奥さんになれるよう、頑張るからっ…その……ずっと、傍にいてください…。」
ああ、なんて可愛いんだろう!
最後は消え入るようなの言葉に、僕の表情筋は全部上がりきってしまった。
嬉しすぎて、思わずを力いっぱい抱きしめる。
「うん、ずっと傍にいるよ。も、僕の傍にいてね。離さないからね!」
「じぇじゅっ…く、るし…!」
腕の中でもがくが愛おしくて、抱きしめる腕の力がなかなか緩められない。
いろんな意味で顔を真っ赤にしているに、気持ちを込めてキスを落とす。
言葉にできないこの気持ちが、せめてキスを通してに伝わるように。
「大切にするよ、約束する。」
「…うん、ありがと…。」
「、大好きだよ。誰よりも、何よりも愛してるよ。」
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2011.4.1
久々じぇじゅん氏作品。
久々すぎてじぇじゅん氏の書き方を忘れました。
もっとすんなりヒロインに「OK」を出させる予定だったんですが、終わってみればすんなりではなく。
ひと悶着やりあってからの、ゴールインでしたね(笑)
タイトルが捻れなくて、そのまんまです。
なんか、こんなような歌詞を何かの歌で聴いたことがあるような…なんだったかな。