エメラルドグリーンのポリッシュを手に取った私を眺めていたジェジュンがぽつりと一言、
「僕にやらせて。」
呟いた。
視線の先
隣り合って座るソファの上。
はたから見たら偉そうに右手を差し出す私の爪に、真剣な顔で一本いっぽん丁寧に塗っていくジェジュン。
こんなこと初めてで、なんだか少し緊張気味な私は、差し出す手に変な力を入れているせいでちょっと疲れてきてしまった。
「ジェジュン、左手は自分で塗れるから右手だけでいいよ。」
「どうせなら左手もやらせてよ。それとも僕に塗られるのきらい?」
「そうじゃないけど……」
その返答に気をよくしたのか、ジェジュンは再び真剣な顔つきで私の指先を彩る。
こういう時、何をすればいいんだろう。
全部やってもらっちゃってる手前、変にだらけるのもなんとなく気が引けるし。
スマホいじるのはもっと気が引けるし。
やることがなくて、しょうがないからジェジュンを眺めることにした。
前髪から覗く伏し目がちな顔。
相変わらず色気が有り余っている感じがする。
唇がちょっと開いちゃって、たまに舌舐めずりしてから下唇を軽く噛みしめて、少し経つとまた唇が少し開く。
ジェジュンはよく舌舐めずりをする。
その仕草がたまらなくセクシーで、本人には言ってないけどかなり目の毒だ。
今も目の当たりにしてしまい、思わず顔をそむけた。
「できたー!」
それと同時に嬉しそうなジェジュンの声。
顔が上げられてジェジュンの視線を横に感じる。
でも今はジェジュンのほうには向き辛くて、思わず顔をそむけたまま不愛想に「ありがと。」と言ってしまった。
その途端、ジェジュンの大きな手が頬に添えられて、
「――っ、」
いきなりキスをされた。
かなり前のめりで迫ってくるジェジュンのせいで、自分の体重を支えるので精一杯。
いったん引き離そうとしたくてもできなくて。
なにより塗ってもらった指先が、何かに触れないように意識を持っていくのにも一苦労で。
「なんで僕を見ないの?」
離れた唇が開口一番そう言って、ジェジュンの顔を見れば真剣な眼差しで私を見つめていた。
吸い込まれそうな瞳。
さっきまで、私の指先しか見ていなかったのに。
「左手、出して。」
そう言って笑うジェジュンの目は私を見つめている。
私は目を逸らしそうになって、ジェジュンの「だめ。」という一言でそれを思いとどまった。
今度はちゃんと見ててと言わんばかりの眼力で、彼は私を離さない。
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2015.7.19
恋人にマニキュアを塗るのが一番似合うメンバーで妄想して、やっぱりこの人しか思いつきませんでした。
そして書き終わってから気づきました。名前変換使ってない…