小さいころは少女漫画が大好きだった。
キャラクターの心の葛藤、揺れ動く気持ち、ありえそうでありえない展開とか、お約束事の散りばめられた夢の世界。
ヒロインを自分に当てはめて感情移入しちゃったり、ライバルキャラを心の底から嫌ったりもして。
どんなに苦難に見舞われても、イヤなライバルが現れても、読み続けるのをやめなかった。
最後には必ずヒロインにとってのハッピーエンドが待っているって知っていたから。信じていたから。
救われる恋なんだと、最初からわかっていたから。
歳を重ねた今、ご都合主義を重ねに重ねた作り話に夢をみることもなくなってしまった。
漫画の中の男の子や女の子は素敵な恋愛をしているけれど、それは読者のためのエンターテインメントであって理想の偶像でしかないことに気づいてしまった。
現実は漫画のように甘くないことを知ってしまった。すべての恋に救いがあるわけじゃないことを知ってしまった。
私は、大人になってしまった。
「、最近どう?」
「なにもないよ。なーんにも」
「えー、そうなのー。合コンとか行ってみたら?」
20年近い付き合いになる友人と久々のランチ。
彼女の隣にはまもなく4歳の誕生日を迎える息子ちゃんが、目を輝かせてお子さまプレートを堪能している。
顔を合わせるたびに同じやり取りをしているから、この友人の真面目に心配してくれている顔を見るのがなんだ気まずかった。
「って最後に彼氏いたのいつだっけ?」
「……んー、いつだったっかな」
「忘れちゃうくらい昔ってこと?」
「たぶんね」
苦笑いしながら答えてみせると、彼女も私と同じような顔をした。
アラサーになって、周りからの結婚報告が増えた。
今までフリーだった子にも恋人ができて、充実した毎日を送っている子もいる。
私もそろそろ恋人がほしいな、と思ってはいるものの、たまに合コンに顔を出しても気持ちが揺れ動く人に巡り会えずに健全帰宅を何度繰り返したことか。
人を好きになるってどういうことだっけ。
最近はそんなことばかり考える。
「なんかこのまま一人の方が気楽でいっかなーって、考えたりもするんだよね」
「えー、もったいないよ」
「うーん……」
三十路に差し掛かり、考えることが多くなった。
もともとめんどくさがりな私は、いくら考えても答えを見いだせないであろうそれらに直面することをやめた。
生きていればなるようになる。
今の私が考えたところで、未来のことなんてなにもわからないし変えようもない。
変えるための努力をすればいくらでも変わるんだろうとは思う。
だけど、ごめん、未来の私。
何かに一歩踏み出す勇気なんて、これっぽっちのかけらも持ち合わせてないんだ。
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2019.07.27