今までの人生の中で、今が一番楽しいのかもしれない。幸せなのかもしれない。
やりたい歌を思いっきり歌って、大好きなファンたちとたくさん触れ合う時間を味わって、いろんな人に出会って想像以上に刺激をもらっている。
辛いこともたくさんあった。
だけどそれを乗り越えてきたご褒美が、少しずつ神様から与えられている。
それが今なのかもしれない。
「いいねー、カッコイイ!次、目線ちょっと外してみてー……いいね!」
軽快なリズムに乗るシャッター音。
被写体は僕。
新しい楽曲のプロモーションで、連日インタビューや撮影で時間が足りないくらいだ。
「オッケー!一回チェック入りまーす」
この後は一度着替えて撮影して、それが終わったら空港に向かうんだっけ……
飛行機の時間まであんまり余裕なかったけど、ご飯くらいは食べられるかな。
ああ、この間途中まで作ってた曲の続きもやらなきゃ。できれば機内で完成させちゃいたいな。
あーでも向こうについてから寝る時間ないって言ってたし……機内では寝といたほうがいいかな。
「ジェジュンさん、大丈夫です?疲れてません?」
「あっ、全然!元気ですよ」
「ならよかった。ボーっとされてたから、ちょっと心配になっちゃって」
「このあともやることいっぱいだなーって考えてました。時間足りなくてヤバイです」
何度か一緒に仕事をした雑誌の編集者の人だ、名前は……なんだったっけ。
ま……なんとかさん、だっけ。
丸メガネにワイルドひげだから、内心でひげメガネさんとしか呼んでなかったんだよなー。
「眞川せんぱーい、ちょっといいですかー!」
「ああ、今行く! じゃあジェジュンさん、あとちょっとなんで、よろしくお願いしますね!」
「(ああ、マガワっていうんだ)はい、お願いします」
スタジオの中はいろんなスタッフさんが忙しそうに動き回っていた。
次の撮影準備が整うまで、暇を持て余せるのは僕だけ。
「(みんなで何かを作ってるって、改めて実感するなー)」
出入り口からメイクさんがボックスを持ちながら僕の方へ向かってくる。
お直しの時間だ。
「次のメイク、新しい僕が表現できる感じで、お願いします」
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2019.07.27