「ちゃん、ホントに大丈夫ー?」
「だ、いじょーぶ……んー…頭いたいー…」
酒につぶれたを背負いながら彼女の家路をたどるジュンス。
彼女の家と宿舎までが近いからとジュンスが面倒を見ることになってしまったが、果たしてこの判断は正しかったといえるのだろうか。
「(お酒が入ってるからこんなフランクな状態でいられるけど、気まずいよなぁ…)」
背負うの体温をひしひしと感じながら、ジュンスはため息を吐く。
高校時代の同級生たちはみんな、きっとジュンスとの間に起こった出来事を知らないのだ。
だからきっとの面倒を見るようにと、しつこくジュンスに押し付けた。
「(ボクたちもう別れちゃってるのに。)」
+++ 淀んだ世界で君を愛す +++
「はい、着いたよ。ちゃん。」
「んー……。」
のかばんから鍵を取り出すのにだいぶ手こずったが、ジュンスはどうにか彼女をベッドまで運んで横たわらせた。
眉間にしわを寄せてうなるを見て、再び軽くため息をつく。
「お水は?いる?」
「…んー…」
「持ってくるから待ってて。」
慣れた足取りで室内を歩き回り、食器棚からコップを取り出して飲料水を注ぐ。
この部屋に最後に来たのはもう5ヶ月も前のことだというのに、ほとんど変わり映えしていなかった。
5ヶ月という期間で変わるものがあるのかと聞かれると返答に困るが、それだけの家は5ヶ月前とほぼ同じ状態だった。
何がどこにあるのかも、ジュンスが把握していた状態のまま。
「、お水。」
「…ん。」
ついつい付き合っていたときと同じように、呼び捨てで彼女を呼んでしまった。
しかしはそんなことを気にしていられる状態ではなく、むしろ意識もあるのかないのかという瀬戸際のところだった。
抱きかかえるようにしての体を起こし、ゆっくりと水を飲ませてやる。
ジュンスは腕の中にがいることに不思議な感覚を覚えた。
「…どうしてボク、こんなことしてるんだろうなぁ。」
「…んー……あたま、いたい…」
「ほら、もう寝ちゃいな。」
ジュンスの声が届いているのか否か、いつの間にかはスースーと寝息を立てて眠りに落ちていた。
そんなを見下ろして、ジュンスは何を考えるまでもなくぼそりと声を漏らす。
「無防備すぎ。お酒が入ってるからって、安心しすぎじゃない?」
彼女の前髪を指で優しくはらうも、はうんともすんとも反応しない。
閉じられたまぶたが動くかもしれないと、額に軽くキスを落としてみる。
しかしそんなことをしても、深い眠りに落ちたが目を開けることはなかった。
「…やり直そうって言ったら、怒る?」
「…………」
「ボクからフったくせにって、きっときみは怒るんだろうなぁ。」
静かに苦笑いするジュンス。
その間も親指の腹での目元を滑らせるようにして撫でる。
柔らかなの肌の感触に、ジュンスはまた違う意味でため息を漏らした。
「いっぱいのこと泣かしちゃったからね。怒られても当然だ。」
「…………」
「もう一回、やり直そう。自分勝手だってわかってるけど、やっぱりボクはきみが好きだ。」
「…………」
眠りについているに向かって、届かないと知っていながらジュンスは独り言を訴えかけるようにつぶやいた。
彼女が起きるまでそばにいよう。
ジュンスは床に座りベッドに寄りかかるようにして朝を迎えることを決心した。
時々、の寝顔を見つめながら第一声の言葉を考えて。
「ボクってやっぱり、どうしようもないなぁ。」
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2012.8.10
5周年感謝企画で匿名の方からいただいたリクエストでございます。
じゅんすが別れた彼女を忘れられないお話。遅くなって大変申し訳ありません!!
この後二人はたぶん無事によりを戻します。
号泣した彼女からポカポカ殴られて、怒られつつもね(笑)
匿名の方へ捧げます!
リクエストありがとうございました!