キスをしてこようとするジュンスをかわして私は微笑む。



腰に回された手もさっと振り払う。





誕生日パーティーを終えて、結構お酒も回っているジュンスの表情は険しい。



私に対する不満がまるまると顔に出ている。





酔って顔を赤くしたジュンスは久しぶり見た。


普段そんなに飲めないのに、今日はシャンパンにワインにカクテルに、浴びるように飲んじゃって。



楽しかったのはわかるけど、明日の朝二日酔いにうなされるジュンスのことを考えるとちょっと心配。






、避けないでこっち来てよ。」


「やだ、ジュンスお酒臭いもん。」





なんて可愛くいってみたりして。そんなの真っ赤な嘘なんだけど。




本当は、酔ったジュンスに主導権を握られたくないだけ。



今日くらいは、私がリードしたいだけ。





そんな私の企みを知らないで、ジュンスはより眉間にしわを寄せた。


脱力している体を引きずるようにして、私のほうへ近寄ってくる。






「今日は、ボクの誕生日なんだよ。こういう日くらい、素直に言うこと聞いてくれてもいいんじゃないの?」





しっかりしゃべっているようで、ところどころで呂律が回ってない。


目もうつろで顔も赤い。



本当に、かなりお酒が回ってきちゃってるんだなあ。






ジュンスの言葉に、いつも素直に言うこと聞いてるじゃん、と反論したくなったけど、ここはぐっと堪える。



何を言うでもなく微笑むだけにして、私は台所に向かった。



ふらふらとついてくるジュンスを横目で確認して、冷蔵庫からシュークリームを取り出す。





ー…ちょっと、聞いてるの。」


「聞いてるよ。ジュンスは私を引寄せて何がしたいの?」


「んー、いちゃいちゃしたい。」


「ふーん。でもそれ、いつもしてるよね。」


「いつでもしたいの。」


「そっかー。」


は、ボクといちゃつきたくないの?」





接近されて、腰に両腕が回された。


私が逃げないようにとしっかりとホールドされている。




意外に必死になってるらしくて、そんなジュンスが可愛くて思わずふき出しそうになる。




潤んだ目つきのジュンスはすごく真剣なのに、私は少し余裕があって。



いつもの立場と逆転。


ちょっと優越感に浸っちゃいそう。





「ねえ、。」


「そりゃあ、いちゃいちゃしたいよ。」





キスされる、その瞬間に、手に持っていたシュークリームをジュンスの口に押し付けた。


その衝撃で生クリームとカスタードが飛び出し、ジュンスの口周りを汚す。




その手を下ろしたのと同時に私がキスをすると、驚いた反動でか、ジュンスが少し身を引いた。



腰に回された手の力も弱まっている。




完全に、不意をつかれたといった感じのジュンス。


にこっと笑った私に、ジュンスはただ固まっているだけ。






「でも今日は、ジュンスの好きにはさせてあげないよ。ジュンスの誕生日だから、私からジュンスが望むようにしてあげる。」






未だ口元に残るシュークリームの中身を舐めにかかると、そこでようやくジュンスが再起動した。



慌てふためいて、もともと赤かった顔が違った理由で赤くなる。






「「(これ、クセになりそう。)」」












すきにさせてあげない、


(”誕生日”だから譲るんじゃなくて、”誕生日”だからこちらから。)



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2013.12.16

1日遅れてしまいましたが、ジュンスおめでとう!
素敵な一日になりましたかねえ。


お題:すきにさせてあげない、 はこさま