同棲を始めて一か月。
同じベッドで一緒に寝ることへの気恥ずかしさも、今ではだいぶ薄れてきたと思う。
ジュンスの仕事が遅くないときは、いつの間にか同じタイミングで寝るようになって。
今もベッドに腰掛けたジュンスが私の背中に「寝よー」と声をかけている。
「ー」
「今いく」
スマホに充電器を挿し、背伸びをしながらジュンスに振り返る。
ふわあ、と大きなあくびをしていて、なんだか子どもみたい。
「ん、なに笑ってるの?」
眠たげな潤んだ目。脱力しきった丸い背中は、とっても気が抜けている。
ジュンスはいつも掛け布団を開けて待っていてくれるけど、毎回私よりも眠そうな顔をしている。
眠いなら先に寝ててもいいのに、そう伝えても頑として寝るタイミングを私に合わせるつもりらしい。
「、はやく入って」
「うん」
優しく腕を引かれる。
ジュンスとの距離が近づいて、掴まれた腕から体温が伝わってくる。
一か月経っても、このささやかなときめきは幸せだなと思う。
「おまたせ……ジュンス?」
促されるがままベッドに上がり、横になろうとしたその瞬間に、大きな腕に包み込まれる感覚。
早く寝ようと言っていた張本人が、なぜか私を抱きしめていた。
胡坐をかいて座っているジュンスとは対照的に、中途半端な体勢の私。
なにか言ってくれるかな、と待っていても特に答えが返ってこないから、仕方なく軽めに背中をたたく。
「ね、これじゃ寝れないよ、ジュンス」
「……にあんまり待たされるから、寝たくなくなっちゃったって言ったら、どうする?」
「どうするって……うーん、ダウト」
「ん?」
「だって超眠いって顔してたもん。寝たくなくなったなんてウソ」
うははは、と私を抱きしめたままゆっくりと枕へ倒れていくジュンス。
ちょっと、こっちは中途半端な姿勢なんだから危ないじゃん。
なんとかバランスをとってうまくベッドに横になった私を、ジュンスはさっきよりも強めに抱きしめてふふ、と笑い続けていた。
「眠いけどー……寝たくないのもほんとなんだよなー」
「明日寝坊しても知らないよ?」
「それはだめだねー」
語尾が切れ悪く伸びるのは、ジュンスの眠気のサイン。
抱きしめられたまま、ジュンスの背中を一定のリズムでやさしくたたくと「〜」と若干抗議するようなテンションで名前を呼ばれた。
なんかこういうところも子どもみたいで、年頃の男がやってるってわかってるのに、かわいく思える。
「羊が一匹、羊が二匹」
「……が一人、が二人」
「あ、勝手に私を増やしてどうする気? ハーレムでも作る気?」
「のハーレム……んー、いいね……」
ぽん、ぽんと私の手に合わせて、ジュンスも弱々しく私の背中をたたいてきた。
それも何回と続かないうちに、近くから寝息が聞こえるようになる。
「ふふ、寝顔もちょっと子供みたい」
こんな私の独り言なんて、きっと聞こえてないだろうけど。
それにこたえるように、ジュンスの口角が少しだけ、ふにゃっと上がった。
今日も明日も、あなたに「おやすみ」
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2021.03.27
在庫一掃、第2弾。