「……っ」
首筋に走る痛みは、じんじんと響いてやがて痺れへと変わる。
痛みへの反射で、僕は君を抱きしめる腕についつい力を込めてしまった。
痺れ
僕の首筋に綺麗な歯を立てて、溢れ出る鮮血に舌を這わすは、いわゆるヴァンパイア。
1週間前、チャンミンの部屋に急に現れて以来、僕たちと一緒に過ごしている。
どこからどうやって、何のために現れたのかは僕たちも、そして自身もよくわかってない。
不思議な出会いだし信じがたい事だけど、がいる。それは動きようのない事実だから――
だから別に、僕たちはそこまで気にしてない。
姿形は人間そのもの、ちゃんと言葉だって喋れるし、ヴァンパイアだと言われなきゃわからない。
ただ違うのは、彼女には吸血するための牙があること、ぐらい。
「…痛い、ですか。」
「大丈夫、だよ。」
は一定のペースで血を吸わないと、最終的には死んでしまうらしい。
だから僕たち5人が、彼女の”餌”になっている。
嫌な気は不思議としないんだ。理由は…わからないけど。
首筋を噛まれる瞬間はいつだって痛いし、慣れるものじゃない。
血を吸われる感覚も、正気ではいられない。
でも痛くて苦しいとか、そういうんじゃない。
フワフワしてるような浮遊感というか、心地いい気持ちよさが身体を支配する――そんな感じ。
今だって、痺れが全身に広がってく感じでひどく心地がいい。
性的な快感とはまた違うものだけど、ひどく妖艶な気分。
気持ちいい。フワフワしてる。正気でなんていられない。
「…ありがとうございました。ジェジュンさん。」
「ん……ガーゼ…。」
僕の腕の中では体を引き、手の甲で口周りの僕の血を拭った。
その姿はいつ見てもドキッとさせられる。
でも、それも一瞬のこと。
あらかじめ自分の傍らに用意しておいた救急箱から、消毒液やガーゼを取り出して僕に施してくれる。
出血し続ける首筋。
が吸い終えると、必ず痛みが再来する。
まるで現実を僕に叩きつけるかのように。
「ごめんなさい。」
ガーゼを貼り終えると、はうな垂れて謝った。
いつも、そう。
ヴァンパイアが吸血して謝るなんておかしいな。
最初はそう思ってた。
だけど今は、なんとなくの気持ちが分かる気がする。
「謝らないでって、いつも言ってるじゃん。僕なら平気だから。」
「…でも――」
「。」
それ以上は何も言わなくていい。
言う必要なんてどこにもない。
言葉を遮るようにして口を塞ぐと、彼女の口から血の味がした。
くらくらと眩暈さえしそうな(Title by LRLB)
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2009.10.1
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