罪悪感を感じるくらいなら最初から血を求めるな。
そう言ってやりたいよ。
虜
「マネージャー、明日のご飯なんだけどさ。血になるもの多めでお願いできる?」
「わかった。…ユチョン、メンバー全員貧血気味だなんて、珍しいんじゃ――」
「あー大丈夫大丈夫! 仕事に影響は出さないからー。」
余計な詮索はしてほしくない。オレたちだってにそんなことしてない。
大丈夫なんだから、大丈夫。
マネージャーの言葉を遮るようにしてオレは楽屋を出た。
やっと仕事が終わって、5人で宿舎に帰宅。
移動の車の中は、時々会話が盛り上がるくらいで、以前の雰囲気は皆無だった。
でもそうなっちゃうよ。
いくら5人でローテーションしながらって言っても、結構な量採られちゃうんだから。
お互いにそのことを知ってるから、変に盛り上げようとかしない。
襲い掛かるダルさは5人全員知ってるし。
だからと言って、誰かがを責めることもしない。
みんなのこと――たぶん好きだから。
「お疲れ様、ありがとうございました。」
宿舎まで送ってくれたスタッフに頭を下げて、やっと家に帰ってこれた。
シン、と静まり返ってるのはいつものこと。
は基本、窓辺で佇んでるか座ってるかして、外を眺めてるらしいから。
夜になっても電気はつけないし。
「オレ、行ってくんね。」
「ああ。」
特に順番が決まってるわけでもないけど、4人にそれとなく告げて、を探す。
宿舎といってもそこまで広い家じゃないから、すぐに見つかる。
いつもなら。
「(いない…。)」
みんなで一緒に帰ってきたメンバーに「どこ?」なんて聞くのは野暮。
でも、一通り宿舎内探した。
外にはまったくといっていいほど出なかった。
今日は外にいるのか?と思って、ベランダも見てみる。
そこに姿はない。
「…ユチョン?」
「ちょっと出てくる。」
家の中探してもいないんだから、これはもう外しかない。
まずはマンションの屋上から探してみようと思って、再び外に出た。
はいつも、オレたちの血を吸ったあと「ごめん」を口にする。
自分の命を永らえるために人を犠牲にすることに罪悪感を抱いてるのか…
ヴァンパイアなのに、は変に人間っぽい。
数日前のオレのときも、罪の意識からか部屋に数分閉じこもってたときがあった。
だから今回も、きっと一緒だ。
求めてるはなのに、は逃げている。
「(いた。)」
エレベーターで最上階まで上がって、そこからさらに階段を上ると、案の定屋上にの姿。
フェンスに寄りかかるようにして座り込んでいる。
俯いてて、顔が見えない。けどきっと――
「!」
「…ユチョン、さん…。」
無表情、だけどオレを見たら少しだけ反応した。
きっと自分が悪いと思ってるんだ。
「オレまだご飯食べてないから、そこまでウマくないと思うけど。」
オレは何食わぬ顔でに近づき、しゃがんで首筋を晒した。
するとは戸惑っているのか、なかなか動きを見せない。
「…どした?」
「ユチョン、さん…。」
「逃げんなよ。」
もっと堂々としたっていいじゃんか。
お前はお前なんだから。
逃げられると 追いかけたくなる(Title by LRLB)
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2009.10.1
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