「っ…?もう、いいの?」
「…はい。ありがとうございました。」
口を拭って、儚げな笑顔で「ありがとう」って言われても、ますます心配になるよ。
切情
「最近、量減ってきてない?大丈夫なの?。」
「ジュンスさんも最近顔色悪いです…私の――」
「ボクの血、まずくなってるから飲まないの?」
の言葉を遮るのと、本当の理由を知る目的で、ボクは少し強めに聞き返す。
正直言うと、は最近日に日に痩せこけてる気がする。
出会ったときから顔色は悪かったけど、ここまでやせ細ってなかった。
はボクらの血以外、何も口にしない。
水も、肉も、野菜も果物も。人間が口にするものを一切食べない。
ヴァンパイアの生きる糧は血なんだって。血しかないんだって。
だからつまり、がこんなになってるのは血の摂取量が足りてないから…
「大丈夫ですから…。」
「どこが大丈夫なの?全然大丈夫そうに見えない。」
「…それを言うならジュンスさんこそ、です。」
心配してくれるのはありがたいけど…だけど…
「ジュンスさん、私…幸せなんです。」
「…?」
「十分すぎるくらい、幸せなんです。」
その言葉はウソじゃないみたいで、それはの表情から読み取れる。
吸血してるときの体勢そのまま、ボクの肩口におでこを預けて、ポツリポツリと言葉を紡いだ。
集中して聞いてないと聞き取れないような、だけど確実に伝わってくる声で。
「ヒトの幸せっていうんでしょうか…初めて、体感したんですけど…。」
「それが、にとっても、幸せ?」
「はい、とても。」
顔を上げてこっちを見て微笑んでくれた。
ああ、ボクもわかった気がする。
暖かい気持ちと一緒に、切なさが胸を締め付けた。
傍に居るだけで 幸せなのだと(Title by LRLB)
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2009.10.1
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