「さっむいねー!」
「って言う割には嬉しそうな顔してるよ。」
「ユノと初詣行けるとは思ってなかったんだもん。わあ、すごい人。」
何段にもわたる石段の上には大量の行列。
ユノとは白い息と共に感嘆のため息を吐き出した。
「行く?」
「うん。だってお参りに来たんだし、時間はたくさんあるからね!」
「は元気だよなあ。」
「ユノがじじ臭いだけー。」
出店で甘酒を買い、二人仲良く参拝待ちの最後尾に並んだ。
想像通り列の進みはかなり遅いが、が次から次へと話題提供をしてくれるおかげでユノも退屈することはなく。
からからと鈴のように笑うのことをずっと眺めていた。
寒さのおかげで鼻のあたまと頬が赤くなっている。
防寒用の帽子とモコモコのマフラーに顔をうずめている彼女は、本当に子どものようだった。
先ほどからじじ臭いと言われてしまったユノだが、も十分子どもっぽいんだよなあと頬を緩めずにはいられない。
「ねえ、ユノはなにお願いした?」
「そういうの聞くのは野暮だぞ。」
「別にいいじゃん、減るもんじゃないんだし。」
「そういうことじゃないだろー。」
長い行列で長いこと待ち、二人はようやく参拝を終えた。
の手を引いて階段を下りるユノは、次はおみくじだとはしゃぐ彼女の顔を見て思わず噴出す。
「あたしはね、”ユノとずっと一緒にいられますように!”ってお願いしたんだー。」
「王道だなー。」
「あたしの心からのお願いだもん。」
「それは、神頼みしなくたって平気だよ。もっと別なことをお願いすればよかったのに。」
少し強めにの腕を引き、人通りのちょうど途切れた木の葉の生い茂る下で立ち止まる。
人目を自分の背中で隠すようにして、ユノは腕の中にを引き込んだ。
優しくも強い力で抱きこまれたは、突然のことに言葉を出せずにいる。
まるでドラマのようだ、と自分の身に起きたことを他人事のように考えていた。
「俺が何て手を合わせたか、教えてあげる。」
野暮だ何だと言っておきながら。
その突っ込みはの口からついぞ出ることはなかった。
その先のユノの言葉を聞いてしまったから。
「は絶対に離しませんって、宣言してきた。」
抱擁から解放され、が目にしたのはユノのドヤ顔。
らしいなあ、と思う反面、それは初詣ですることではないのでは、とも思う。
それでもユノのその言葉は、ある意味プロポーズにも近い言葉。
本人から直接聞かされたは嬉しさを隠しきれず、へらっと頬を緩ませてあどけなさの残る笑顔を見せた。
「神様に約束したんだから、破ったらとんでもないバチが当たるからね、ユノ。」
「絶対破らないから大丈夫。」
「…へへへ、」
「しまらない顔してんなー。よし、おみくじ、行こう。結婚の項目見なきゃ。」
「……!」
新年早々、喜びにも似た驚きの連続では夢を見ているような気分だった。
しっかりとつながれた手を、それでも離すまいと再度握り締めてユノの隣を歩き出す。
「今年もいい年になるといいねー、ユノ。」
「なるさ。俺と一緒にいるんだから。」
「……自分で言っといて照れないでよ。こっちが恥ずかしい。」
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2015.1.14
みなさんにとってよい一年になりますように!