順調に仕事が終われば、少し早めに帰れるかもしれない。
そのマネージャーの言葉に、ジェジュンは目の色を変えて反応した。
「まあ順調にいくことはそうそうないけど……」と後に続く言葉は全く聞いておらず、ドイツ入りをしてから毎日休憩すらも惜しんで撮影に取り掛かった。
その甲斐あって、ジェジュンは単身早めの帰国が許される。
ほかのメンバーたちは呆れ笑いをしつつも、快く見送ってくれた。
24日、20時前の飛行機に乗り込み、早くに会いたいと気持ちが急く。
早めに帰国できることになったとにメッセージを入れたが、返信が来ることはなかった。
少し不思議に思うも、半日後には会えるのだという期待に胸を膨らませ、ジェジュンは機内で落ち着きなく過ごしていた。
インターホンを鳴らす。
タクシーの運転手を急かしての家までやって来たが、反応がない。
電話をかけてもつながらない。
それどころか、『電波が届かない場所にいるか電源が入っていない』なんていう音声ガイダンスが流れてくる。
現在時刻は15時を過ぎたところ。
外出しているんだろうと、ジェジュンははやる心を落ち着かせての帰宅を待った。
ところが、時間が過ぎても一向にの姿が見えない。
あまり長い時間マンション周辺でうろうろできるわけもなく、近くのファミレスで時間をつぶすがからの連絡もなし。
結局19時を回っても、インターホンの返答がなかったので、ジェジュンは泣く泣く宿舎への帰路についた。
何かあったのではないかと、別の意味で胸がざわつく。
そんなことはないと思う反面、人出の多い今日は外出先でトラブルに巻き込まれる可能性も普段より跳ね上がる。
何度も何度も、携帯の画面を見ては連絡が入っていないことに落胆してばかり。
もう何度目かもわからないため息を深く吐いたとき、待ちに待った着信音がけたたましく鳴った。
「もしもし!?」
『あ、ジェジュン。久しぶり〜。』
「今どこにいるの!?」
『え?なに、すごい剣幕……』
久々のののほほんとした声に、ジェジュンは張りつめていた糸を緩めたように脱力した。
聞けばの知り合いが営む温泉宿に急遽キャンセルが出て、食材などが無駄になってしまうから泊まりに来ないかと連絡を受けたという。
一度は耳にしたことがある観光地で、の家からは2,3時間ほどかかる場所だ。
電話がつながらなかったのは、電池量が少ない状態で家を出たために充電切れになり、宿で借りた充電器も調子が悪く復旧までに時間がかかったという。
「……もう、心配した……。」
『え?っていうか、ジェジュン今ドイツにいるんじゃないの?』
「早めに仕事を終えて先に帰ってきたの。……に会いたくて。」
『えーっ、なにそれ!だってクリスマスまで仕事って言ってたじゃん!……私、会えないと思って……』
言葉尻がどんどん弱くなっていく。
の言葉に、ヤケ気味に温泉宿への一人旅を決行したんだとわかると、自然と笑いが込み上げてきた。
顔を見なくても、しょげているの表情がわかる。
「、いつ帰ってくるの。」
『えっ、』
「早く会いたいんだけど。」
『……ご飯食べたら、そのまま帰るよ。』
「日付変わっちゃうね。」
『しかたないでしょ!……ごめん。すぐ帰るから。』
言葉にせずとも、もはやお互いの気持ちなど痛いほどにわかっていた。
それでも、言わずにはいられない。
早く会いたいと、お互いに気持ちが急いている。
名残惜しそうに通話を切った後、ジェジュンは深呼吸をして一人ベッドに沈み込んだ。
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2016.12.28