真夏のイタズラ











「あっつい……」









梅雨明けと同時に、一気に猛暑が押し寄せてきた今年の夏。





そんな地獄のような季節に、うちのエアコンがなんと故障。




暖房はつくくせに冷房がつかなくなってしまった。ホント、ついてない。









「あー……セミ…うるさい…」








もうこうなると、部屋の窓を全開にして、うちわ片手にソファに横になってるしかない。





体力も気力も、この暑さのせいでこれっぽっちも残ってないんだもん。






太陽が照りつけるこの真昼間、日差しと熱風とセミの鳴き声とで暑さが半端ない。














「ただーいまー。」









ドアの開閉音とユチョンの声が、彼の帰宅を知らせる。





ビニール袋のガサガサする音と、スリッパで歩く音が近づいてきた。







「あちー!!コンビニはマジ天国だったー!」とか言って、ユチョンが私の横にドカッと座った。




そしてユチョンも遠慮なしに、私の手からうちわをひったくる。









「…ちょっと…」




「はああぁっ、あちぃ〜!!」




「…返してー…」




「あとちょっと!ちょっとだけ!」










ユチョンは自分を仰ぎつつ、風が私にも当たるようにしてくれた。





思わず目を瞑ってしまう。




涼しい…とは言いがたいけど、ありがたい風。










「…、大丈夫?さっきからすごいグッタリしてんじゃん。」




「…ん…暑いんだもん…。」




「明日にはクーラー直るから、ガンバレー!」




「きゃっ!!」









なんという不意打ち。





コンビニで買ってきたらしいアイスを、私の首もとにペチッと当ててきた。






いきなりの冷たさに、思わず体がはねて叫び声が出た。










「…っ、なにすんのっ…!」




「今のカワイかった。もっかい――」




「やめて…冷たっ!!」




「違うでしょ、「きゃっ!!」でしょ!」










もう意味がわからない。





変にテンションの上がったユチョンは、至る所にアイスを当ててくる。




腕、ほっぺ、首、足…







アイスがどんどん溶けていく様が頭の中に容易に浮かんだ。










「元気でたー?」




「…疲れた…。」




「少しは涼しくなったっしょ?」




「なってない。」




「うわっ、アイスでろでろ〜…、口開けて。」




「…それを私に食べさせるわけ?」




「ほかのアイスもしまってないからどれも一緒でしょ。」




「(しまえよ、冷凍庫に。)」









「はい、あーん!」と、ユチョンは私にアイス――ソフトクリームを差し出した。





ソフトクリームは見事に形を歪ませて、今にもどろっと落っこちそうになっている。




このまま床にアイスが落ちるのもイヤだし、私はしぶしぶ口を開けた。






ソフトクリームの向こう側で、ユチョンがニコニコして私を見ていた。









「ちゃんと上手に食べて〜。」




「ん…(あー、溶けてるー…)」









私の顎の下で、ユチョンが手を受け皿のようにしてソフトクリームの落下を待っている。





一滴、二滴…ついに液体になったソフトクリームは、ユチョンの手の上に落ちた。









「ほら、、どんどん食べて!」




「ちょっ…」








ソファに寝そべった状態で食べるのって、結構難しい。




ユチョンだってそれくらいわかってるはずなのに、私の口にどんどんソフトクリームを押し付けてくる。





必死になって食べても、溶け始めてるソフトクリームはユチョンの手の上へ落ちる。










「…うぁ〜、今のエロッ。」







口の周りに纏わりつくソフトクリームを舌で舐めた瞬間、ユチョンがにやりと笑った。





そして、ソフトクリームを自分の口へ持っていって、パクリ。






結構な量を口の中に入れて、もぐもぐしているユチョン。




目をぎゅーっと瞑って、「ん〜!!」とアイスの冷たさを味わっている。









「うめっ!!」




「……。」




「あ、口についてるよ。」




「…っ――!」









この暑さで、頭がやられたんじゃないかな、と思った。




そしてすぐに、ああ、ユチョンはもとからこんなんだったな、と思い出す。





何かと口実にして、私にセクハラを仕掛けてくることなんて、日常茶飯事だった。




そのことを忘れてる私のほうが、暑さにやられてるのかも…









「――ん、ちょっと…!」









まるでキスの延長、とでもいうかのように、ごく自然な流れでユチョンは私の首筋にも吸い付いた。







真昼間から何をやってるんだろう。




やっぱり、頭やられたんじゃないかな。ユチョン。










「…そんな顔して誘わなくたっていいんだよ?。」




「誘ってなんかないですー。」




「またまたぁ、そういうこと言うー。」




「…近寄んないで、暑苦しい。」




「ハイ!? ちょっと、!」











窓の向こうで鳴くセミの声が、私たちに呆れてるような気がした。









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2010.7.22

暑いですね、ぐったりしちゃうくらい暑いですね。
私の中のユチョンは、暑かろうがなんだろうがヒロイン大好きですね(笑)
3年前にも似たようなの書いてますね。書き終わって気づきました。

水分をたくさんとって、熱中症などに気をつけましょうね!(`_´*)/