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久しぶりにオレと、二人の休みがかぶったとある平日。
日ごろの疲れを取ろうということで、あえて外出せずに部屋の中でのんびりと過ごすオレたち。
二人がけ用のソファに仲良く肩を並べて、が2日前に借りてきたセックス・アンド・ザ・シティ2をぼーっと見ている。
とはいっても、オレの頭の中に本編の内容が入ってきたのは冒頭の十数分だけ。
女の人が好きそうな内容の映画だ。少なくとも、オレはあんまり興味のあるものじゃない。
映画がどうでもよくなってからは、隣にいるのことばかりを考えている。
の肩に腕を回して、さらさらな髪の毛に触れてみたり、少し抱き寄せて頭を重ねてみたり。
そんなことをやっていると、も俺の腰に手を回してきた。
「ん?どうした?」
「くっつきたくなったの。」
「…カワイイこと言うな、お前。」
「そうかな?」
少し上目づかいになったの額に、ちゅっとわざとらしくリップ音を立ててキスを落とした。
カワイイ、と続けて言うと、は瞬きを一度だけしてオレに抱きついてくる。
ホントこいつ、カワイイ。
「なんだよ、いいのか?セックス・アンド・ザ・シティは。」
「…いつでも見れるもん。」
「あと5日間だけな。」
「ユチョンー。」
「だから、なんだって。」
いつの間にか、二人がけ用の狭いソファの上で、オレとは向かい合ってくっついていた。
肩口に顔をぐりぐりと押し付けるようにして、はオレの名前を呼ぶ。
そんな姿に甘えた猫を重ねて、オレは思わず笑ってしまった。
「ホントに、は甘えんぼうだ。」
「ユチョンにだけだもん。」
「当たり前。オレ以外にも甘えてたら、許さない。」
「へへへ…ユチョン、キスして。」
視線がぶつかる。
の濡れた瞳に自分の顔が映った。
オレは心底こいつのことが好きだなと思う。
骨抜きにされてると思う。それくらい、惚れ込んでいる。
ほかの何を手放してもいいから、こいつだけはどこへもやりたくない。
そう思ったのは、が初めてだった。
「どこにキスしてほしい?」
「…わかってるでしょ、焦らさないで。」
「んー、ここか?」
もう一度、額にキスをする。
するとは不満げに首を横に振った。
掴まれた腕の力が、少しだけ強くなる。
「じゃあ、こっち?」
まぶた、こめかみ、鼻の頭、ほっぺ…
軽いリップ音を立てながらキスを落としていく。
その間も、は「そうじゃない。」と小さい声でオレに抗議した。
ものすごい至近距離での香りに包まれているオレは、とっくに上機嫌。
不機嫌そうな顔をするすら愛おしくて、もう少しだけいじめたくなる。
「ああ、こっちか。」
耳元でわざと低い声でしゃべりながら、の首筋に唇を当てた。
ピクリとの身体が反応する。
舌先で肌を舐めて、それから軽く吸い上げるとがオレの名を呼んだ。
「どうした?キス、してほしかったんだろ?」
「…そこじゃないよ…。」
「反応、してたくせに?」
「っ…もう…ユチョン、やだ。」
オレの指摘には少し顔を赤らめる。
やっぱり図星だったか、と、オレは嬉しくてたまらない。
「じゃあ、教えてくれよ。はどこにキスしてほしいんだ?」
再び耳元でささやいて、背中に回した手でゆっくりと身体をなでる。
ピクリとが動いて、オレの顔を見つめた。
赤い顔に、相変わらず濡れた瞳。
少し挑発するような目線を送ると、がゆっくりと動き出して、オレの唇に自分のそれを重ねた。
オレの首にの腕が回る。
オレもの身体を抱きなおす。
服を着ていてもわかる、互いの体温の高さ。
「どうする?。」
「…なにが…」
「なにがって、それこそ言わなくてもわかるだろ?」
正面で赤面しながらムスッとする。
オレは笑みをこらえ切れなくて、笑いながらの頭をなでた。
くしゃくしゃになった髪の毛を整えるの手を引いて、立ち上がる。
「DVDは、また今度一緒に見ような。」
きっと一緒に見たって内容なんて入ってこないだろうけど。
オレはリモコンの停止ボタンを押して、の手を引いた。
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2012.6.26
5周年感謝企画で和実さんからリクエストをいただきました!
ゆちょんで、甘く、リアルに、ゆちょん目線のお話で…ということだったので。
リアルにって、結構難しいですね!これリアル?
甘く、甘く…!と念じていたら会話が思ったより少なくなっちゃいました。ごめんなさい。
和実さんに捧げます!
リクエストありがとうございました!