「いつでものために、を想って歌うよ。だから、オレのこと信じて待ってて。」
私との別れ際、ユチョンは決まってこの言葉を置いていく。
時には頭をなでながら、時には抱きしめながら、時には頬を両手で包みながら。
あの低い声で、これ以上ないほど優しい声で。
そして私は決まって疑うわけがないと、待ってるよとユチョンを送り出す。
このやり取りを、もう何度しただろう。
私とユチョンだけの、別れ際の約束。
promise
初めて言われたときは、なんて臭いセリフを言うんだろうって笑っちゃったけど、
ジュンスくんからあの話を聞かされたときは、私はこんなにユチョンに愛されてるんだと泣いてしまった。
―― ユチョンはね、不安でたまらないんだって。
自分がいない間にちゃんがほかの人に目移りしないか、とか、逆に自分の浮気を疑われたりしないかとか、
いつ会えるかわからないのに待っててくれって言ってる自分を、ちゃんは辟易してないかとか、
普段は笑ってくれてるけど、本当はとっくに愛情なんて尽きちゃってるんじゃないかとか。
いらない妄想ばっかりして自分で自分の首を絞めて、夜ごとひっそり苦しんでるんだよ、ユチョン。
そんな心配いらないってボクたちも言うんだけどね。やっぱり不安でしょうがないみたい。
この間なんて惚気られたよ!
日を重ねるごとに、ちゃんが好きでたまらなくなってくんだって。
今あるスケジュールを全部蹴っ飛ばして、ほかの何も気にしないでちゃんのそばにいたくなるって。
「オレの愛のすべてを伝えたい。」とか言ってたよー、そのときはユチョンには申し訳ないけど笑っちゃって。
ちゃんは本当に愛されてるんだね。
本当にユチョンは、ちゃんのこと大好きだよ。よそ見なんかまったくしないで、ちゃんだけを見てるって感じ。 ――
はっきり言って、私はユチョンにこんなにまで愛してもらえるほどの魅力がある女じゃない。
その自覚はあるし、だからこそ、少しでもユチョンに釣り合う女の人になろうと努力もしてる。
どうして私を好きなの?なんて愚問をしたこともあったけど、ユチョンはいたって真剣な目で「理由なんてない。」と返してきた。
『がであることに、オレがオレであることに理由がないように、オレがを好きになったことに理由なんてない。
強いてあげるなら、オレの本能がに惹かれたから、かな。まあ、恋愛なんてそんなもんじゃない?』
あのときのユチョンの目も、本当に優しくて真剣だった。
私はすごい人に愛されてるんだなぁって、すごくすごく嬉しくて、体が震えたことを今でも覚えてる。
「なに、。ずーっとオレの顔ばっかり見て。」
「あれ、寝たんじゃないの?」
「そんなに凝視されたら寝れない。」
「あはは、バレてたのね…。」
フッと開かれた瞳に映っているのは私一人だけ。
ユチョンの腕枕に頭を預けながら、じっと見つめていたことを見破られていた。
寝たものだとばかり思っていたから、ユチョンが起きていたことに驚きを隠せない。
今になって恥ずかしさがこみ上げてきた。
「あーあ、のせいで目が覚めちゃった。」
「私のせいじゃないでしょ。」
「…ねえ、寝ないで起きてようよ。」
「えー、やだよ、眠くなってきちゃったもん。」
「だって、次いつこうやってゆっくりできるか、わからないじゃん。」
至近距離から落ちてくるユチョンの声は、本当に心地がよくていつまでも聞いていたくなる。
甘くて、低くて、優しくて。
そんな素敵な声をユチョンに授けた神様に、私は何度も感謝をした。
、と低く甘く囁くユチョンの声が好き。
今の今だけは、ほかの誰でもない私だけを呼んでくれている。
たかが名前を呼ばれるだけで、と思うかもしれないけど、私にとってはすごく幸せなことだ。
「ずっとユチョンのこと待ってるから、いいよ。次いつゆっくりできるか、わからなくても。」
少し、本当に少しだけ、ユチョンが声を詰まらせた。
真っ直ぐに目だけを見つめて呟くと、ユチョンはぐっと何かをこらえるような表情で私を抱きしめた。
「ね、だから今日くらいこのまま寝ちゃおう。」
「…ホントに、待っててくれる?」
「もちろんだよ。今までもこれからも、変わらずに待ってるよ。私はユチョンが大好きだから。」
きゅ、と、より強く抱きしめられて、私は少しだけ苦しくなった。
寝ようか、と呟くと、ユチョンは一度だけ小さく頷いて、私を強く抱きしめたまま毛布を肩までかけた。
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2013.4.10
お互いに「好きで好きでしょうがない」という感じを出したかったんですが、最後失速してしまった。