どこまでも蕩けてく。
「ユチョン、チョコレート持ってない?」
「チョコ? あったかなぁ、たぶんないと思うよ。」
「えー、食べたい気分なのに。あーあ。」
「買ってくればいいじゃん。」
夕飯を食べ終えたばっかりなのにもう甘いものか、とオレはある種の感心をにもつ。
皿洗いをするオレに向かってか、ブツクサと文句を言っているはソファに寝そべりリラックスタイム真っ最中。
到底外に出かけるようには思えない。
オレだって、こんな時間から外に出るのはメンドクサイ。
「あーん、チョコ食べたーい。」
「そういえば冷蔵庫にプリンがあったじゃん、それ食べれば?」
「プリンじゃなくてチョコが食べたいの。」
「わがままだなぁ。」
一通りの洗い物を片付けて、の寝そべるソファに向かう。
眉尻を下げて困った風を演出しているの上目づかいがオレを捕らえた。
オレはこの顔に弱い。
そしてもそのことを知っている。
まったくもってあざとい。
「……持ってないと思うけどなぁ、一応カバンの中探してみる。」
こんな時に都合よくチョコレートをカバンに忍ばせているわけがないだろう。
と、思いつつ中を漁っていると、昨日事務所の人からもらった箱が出てきた。
もらった時は中身が何かなんて見てなかったけど、改めて表示を見るとそこにはチョコレート菓子の文字が。
都合よくチョコレートが入ってた。
なんだかなあ。
とは言っても、これはチョコレートだけど純粋にに喜んでもらえるような代物でもない。
ウイスキー入りのチョコレート、いわゆるウイスキーボンボンだからだ。
酒に弱いはこういうの苦手だろうし、何よりチョコレートを食べたがっているには余計なものまでついてくるという……
でも食べたがってるんだし、あげるべきか。
「ユチョン、あったー?」
「うーん、あったにはあった……」
「わ、やったー!早くちょうだい。」
まあ、いいか。
金紙で個装されている一粒を手渡すと、ルンルンと上機嫌にそれを口に頬り込んだ。
オレも同じようにウイスキーボンボンを口に入れて、そんなを横目に見ながらチョコレートを噛み砕く。
ウイスキー特有の香りが鼻に抜けて、甘いチョコレートと味が混ざって口の中に広がった。
「ん、う……」
眉間にしわを寄せて、噛み砕くペースを落としてオレを睨みつけてきた。
そんな顔されても少しも怖くないけど。
吐き出すかと思っていたら、顔をギュッとつぶってそのまま飲み込んだ。
自分が食べるといった手前のプライドか、ボンボンとはいえチョコレートだからか。
「よく食べれたじゃん。」
「ユチョン、これ……っ、ごほっ、ごほっ!」
「あぁ、水持ってこようか?」
ウイスキーがのどに絡んだらしい。
の眉間のしわはますます深くなる。
「うぅ……チョコレートが食べたかったのに、これじゃあ食べれない。」
とても恨めしそうにオレを見つめてくる。
これじゃあまるでオレが悪者じゃん……あ、、オレが悪いのか?
別に他意があったわけじゃなくて、純粋に善意でやったことなのに。
まったく、のわがままをちゃんと聞いてあげたんだからそんな顔で見るなよな。
「じゃあチョコレートだけあげよっか?」
「どう、やって?」
未だにむせながら、それでもオレの言葉に少しは機嫌をよくしたのかの顔が明るくなる。
「オレがこれを口に入れて、チョコを割ってウイスキーを飲むから、そしたらはチョコだけ食べれるじゃん。」
「え、」
「口移しすれば溶けたチョコが手に着かないし一石二鳥でしょ。」
「ちょ、と、」
「さ、善は急げっていうし。さっそく一個目、いくよ。」
こうなったらオレもこの状況を楽しんで、少しくらいにありがたく思ってもらおう。
言っておくけど他意はまったくないんだ。
これはへの善意でやってるだけだから。
「ゆちょ、」
「ほら、口開けてよ。」
---------------
2015.10.07
表現方法に幅がなくて悔しいです。