ちゃん。ユノって、やっぱり嫉妬とかする?」



「んー、まあ。それなりに。」



「どんなことで?」





テーブルのはいくつものお菓子の袋。



それらをつまみながら、ジェジュンとは女子会さながらの雰囲気を漂わせてトークに花を咲かせている。





「ほかの人のことベタ褒めしたり、スキンシップとったりすると。」



「ああー。まあ、それはユノに限らず男はみんな嫉妬するよ。」



「すっごいわかりやすいよ、機嫌が悪くなると顔が固くなるし口数も少なくなるし、声も低くなる。」





バリ、とポテチを咀嚼しながら、は思い出したように笑った。







公開プロポーズ







「この間なんかも、映画見てて私がボソッと俳優のこと褒めたら、へそ曲げちゃってさ。」



「あはは、ユノはそういうの聞くとすぐスネそうだよね。」



「困るよね。ユノは自分のこと棚に上げてさ。いつも自分がどれだけやきもちを妬かせてるのか、わかってないんだよ!」





少し大げさに頬杖を付いて、氷で冷やされたアイスティーを口に含む。




だいたいさぁ、と言葉を続けるがその表情は口を尖らせてはいるものの本当は嫉妬されて嬉しいということを隠しきれていない。



口の端がぴくぴくと、上がったり下がったりを繰り返している。




そんなを見ていると、ジェジュンは笑いながらも、どうしても眉を八の字に下げざるを得なかった。





ちゃんは、ユノの嫉妬をうざいとかって思う?」



「そこまでは、思わないけど……少しは自分も人にやきもち妬かせてるんだってこと、自覚してほしいよね。」



「ユノに嫉妬してもらえて嬉しいって思う?」



「う、……れし、かったり、ちょっとめんどくさかったり…」



「ふーん、ちゃん嘘つきだねえ。顔、すっごい緩んでるよ。」





ふふふというジェジュンの笑みに、は言葉を詰まらせてから顔を赤らめた。



図星だと言っているようなその表情からは、幸せオーラがぷんぷんと漂っている。





は本当に表情豊かで、そんな彼女を見ている周りは自然と惹きつけられてしまうことをジェジュンは知っている。



そんな彼女を持つユノがいろんなことに嫉妬してしまうのは、やはり仕方のないことだ。




天真爛漫な子どもがそのまま大人に育ったような彼女を、いつもハラハラしながら離れていかないように頑張っているんだろうと思うと、再び眉が八の字に下がった。





ユノも存外必死である。






「やっぱり、好きな人からやきもち妬いてもらるとなんだかんだ言って嬉しいよね。」



「…何でこんな話になってるの?」



「えー? いいじゃん、ちゃんはユノにすっごい愛されてるってことだよ。幸せ者だね。」



「……。」



「知ってる?僕たちメンバー間では、二人のこと夫婦って呼んでるんだよ。」



「ふ、夫婦!?」





予想通りの反応に思わず噴き出しそうになるも、何とか踏ん張って笑いを噛み殺す。



ぽかんと口を開けてそのままの体制で固まっているは、間抜けな姿だが可愛らしい。




を凝視し続けているとせっかく耐えた笑いがぶり返してきそうになるので、ジェジュンはアイスティーに目を落としながら問う。






ちゃんは、ユノと結婚したいと思う?」



「結婚、て――」



「ユノのお嫁さんになって、一緒に家庭を作って、ユノとの子どもを産んで、家族で楽しく過ごす。薬指には指輪をはめて。」



「…そりゃあ…いつかはしたいし、できたらいいなとは思うけど……そんな話、ユノとしたことないし――」





もじもじと恥ずかしそうに小さな声で答える



彼女の中にはいろんな感情が入り混じっているらしく、表情は微妙にころころと変わっていく。




そんなを前に、ジェジュンはとうとうプッと噴き出してしまった。






「え、な、なに――」



「お前が全然気づかないからだよ。」





ジェジュンが噴き出したのとほぼ同時に、は背後から伸びてきた腕に背もたれごと抱きしめられた。



その正体は声ですぐにユノだとわかるが、いきなりのことに驚いて状況を把握するのに数秒を要した。






なぜユノが、ここに。




そんな顔をしているを見て、ジェジュンは口を押さえてニヤニヤしている。





ジェジュンは知っていたのだ、ユノがずっとこの場にいることを。



知っていたどころか、ユノに登場のタイミングを目で合図していたのがほかならぬジェジュンである。



二人の共謀にかかっていたとは露知らず、はまんまとしゃべらされたわけだ。





「ごめんねちゃん。ユノに誘導役を頼まれたから…」




というジェジュンも実に楽しそうに、口元を押さえながら目の前のユノとを見つめている。






「…ユノ、いつからいたの。」



「最初から。全部聞かせてもらった。初耳だよ、お前が俺のことでやきもち妬いてるなんて。嬉しいな。」



「……ねえ、もう離して。」



「駄目。今から大事な話するから。」





を抱きしめる腕の力が少しだけ強くなる。




ユノの言葉に、はドキリとして意味もなく姿勢を正す。





「…ジェジュン、席はずしてくれないのか?」



「タダ見くらいさせてよ、誘導役を頼まれた報酬として。」



「……。」





ジェジュンの視線をひしひしと感じながら、は低い声で名前を呼ばれる。



卑怯だ、と思いながらは目を硬くつぶった。




こんな至近距離で彼の甘い声で囁かれて、ドキドキしないはずがない。



ユノと付き合い始めてから要所要所で彼の思惑に見事に嵌っている気がする。



いやというわけではないが、すんなりと納得もできない。





。俺と結婚してくれる?」





話の流れからしてこうなるだろうともわかっていたが、いざこの言葉を耳にすると衝撃の度合いが違う。



胸に何かが詰まるような感覚がして、その何かが溢れそうになってその場で弾けて、行き場のなくなったそれらが右往左往している。



言葉を発そうとすると声が震える気がして、うまく言葉を紡げない。




きっとこれは幸せゆえの苦しみなのだ。



こんなにも苦しいのに、暖かい気持ちで満たされている。





「…ユノ。答えは聞かずもがな、なんじゃない。さっきのちゃんの言葉。」



「まあな。保証人はジェジュン、お前に頼むよ。」



「喜んでお引き受けいたします。」





目の前のジェジュンが笑っている、とても幸せそうに。



その顔がだんだんぼやけていって、少し視界が晴れたと思ったら頬を涙が滑り落ちた。




後ろからを抱きしめるユノの腕の力がより強まって、を離すまいと包み込む。




の頬を流れ落ちた涙の後を辿るようにユノの唇が当てられて、その慈愛に満ちた仕草には顔をほころばせる。





「俺の全部をあげるから、の全部を俺にちょうだい。」



「…そんなこと私に言っていいの?」



「お前にしか言うつもりはないよ。」





他人のすべても自分のすべても、受け取りきれないし与えきれないことは二人とも知っている。



それでも、それだけの愛情表現で想いの丈を伝えたいと思える人が、隣にいる。




とても愛しい存在。





「そばにいさせてください。」



「それは俺の台詞。」



「ふふ…そばにいてね。」



「約束する。」








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2012.8.8

5周年感謝企画で、いつも大変お世話になっているウメ子さんからいただいたリクエストで、ゆのです。
ほんとあげるの遅すぎだろう…地に頭をめり込む勢いで土下座させていただきます。m(_ _)m
話自体は結構前に出来上がってたんですが、どうにも納得がいかなくて加筆に加筆を加えたらこうなりました。
本当に遅くなってすみません。m(_ _)m

ゆのから嫉妬〜というネタをいただいたくせに作中で直接的な嫉妬がない…(° °)
せっかくいただいたリクエストなのにうまく活かせずにすみません!
ゆのって、どういう嫉妬をするんですかね?やっぱり人並みに些細なことにもやきもち妬いちゃうのかな。

ということで、ウメ子さんに捧げます。大変遅くなって申し訳ございませんでした!
リクエストありがとうございました!