三ヶ月ぶりの再会。


は相変わらずの笑顔で俺を迎えてくれた。



喜びの抱擁も程ほどに、俺は三ヶ月前自分から切り出した約束を果たすために、の手を引く。




「え、ユノ?」


「この前約束しただろ。次のオフには必ずデートしようって。」




正直、身体は疲労でまいっている。


でも自分から言い出したことだし、ただでさえ普通に会うことさえままならないからこれは俺にとっての義務みたいなものだ。



身体が疲れてるだけで、気持ち的には元気だ。


と一緒にいたいし、出かけたいし、いろんなものを一緒に見て笑いあいたい。




俺が何とかすればいいだけの話。


身体に鞭を打てば、動けないわけじゃない。





「いいよ、今日はゆっくりしようよ。」


「ダメだ。ちゃんと約束したんだから。」


「いつだって行けるじゃん。」


「もう長いこと出かけてないだろ。」


「頑固だなぁ、別に出かけなくたって一緒にいられればそれでいいし、私は気にしないよ。」





が力強く、俺の手を引き返した。



足元のおぼつかない俺は、手を引かれるままソファまで誘導される。


一緒に腰をかけたと思ったら、軽いキスをされて俺は呆けてしまった。




けたけたと少女のように笑うが眩しい。





「ここはひとつ、おうちデートということで。ね、納得してください。」


「…はそれでいいの?」


「さっきから言ってるでしょ、自分の彼女の言葉を信じなさい。」





俺より二周りくらい小さい手のひらが、荒々しく頭を撫でてくる。



満面の笑みでいるに、思わず謝罪の言葉がでかかった。


すんでのところで飲み込んで、愛を囁く言葉に変える。





「私の前では、律儀でいなくていいから。優先順位の一番先頭には、自分を置いてよ、ユノ。」


「なんで?」


「なんでじゃないでしょ。常日頃気ぃ遣って、ストレス受けまくって、自分のこと後回しなクセに。」


「……。」


「だから私には気遣い無用、遠慮も不要。いつもの優しさも、自分のために使ってあげて。」


「いつもの俺でいるなってこと?」


「んー、まあそうなるかなぁ?自分を甘やかしなってことね。」





年は変わらないのに、なんだか姉のような、母のようなを見ていてすごく安心する俺がいる。



今だって十分、自分自身を甘やかしているつもりでいるのに、は今以上に自分を甘やかせと俺に言う。





「周りは気にしない、私に気を遣わない、優しくするのは自分に。はい、約束。指きり。」


「…そしたら、俺、ただの男でしかないんだけど…?」


「それでいいの!私の前で紳士でいる必要なんかないから。芸能人としてのユノじゃなく、ただの男としてのユノでいいの。」





そこまで言って、は俺の目を見てプッと吹き出した。



何で笑われたのかわからない。


顔に何かついてるのかと思って触ってみるけど、特に異常なし。




は涙をぬぐいながら、まだ笑っている。





「そんな不安そうな顔しなくてもヘーキだって!ただの男のユノだって、嫌いになんかならないから!」


「え、」


「気遣われなくたって優しくされなくたって、仮にユノが自分勝手で手の着けようのない男でも、大好きだから大丈夫。」





わかった!?



の笑顔に、俺は言葉を詰まらせる。


首だけ縦に振るとはよし、と言って再び俺の頭をガシガシと撫でた。





でもせめてもの罪滅ぼしをさせてほしい、と言うと、まだ言うかと地味に痛いデコピンを食らわされた。








偉大なる恋人



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2013.11.3

8月の終わりに書き上げたのに、すっかり上げ忘れてました。
優しくて気遣いができて、いつでも笑顔を見せている素敵でカッコいい男。
でもたまには”ただの男”になるときがあってもいいですよね。