4.噛みあわない私タチ
「あれ……、ここにあった手帳知らない?」
「手帳?」
「黒い表紙で厚みがあって…A5サイズくらいのやつ。」
「ああ、あれならそこのカラーボックスに立てたよ。」
「えー?……どこ?」
籍を入れてから1週間。
最初の2日間は家にいたユノだったが、そこから泊りがけのスケジュールが続き今日やっと家に帰ってきた。
少し疲れの見える顔で帰ってきて、夕飯の支度をしようかとエプロンに手をかけた瞬間「すぐにまた仕事行くから、飯はいらない。」と言われた。
「そう。」とだけ答えて私は自分の分の夕飯を作り始める。
リビングではあっちこっちでガサガサ物を探し回るユノ。
「…、シルバーの薄いノートパソコンは?」
「持ち歩く用のカバンが出てきたからそれにしまってユノの部屋に持ってったよ。」
「ソファに置いてた辞書が見当たらないんだけど。」
「辞書ならたぶんユノの部屋の本棚。」
一緒に住んで、ユノの散らかし癖には正直呆れてしまった。
本当にそこかしこに物を置いてそのままだから、邪魔になるし部屋がどんどん汚くなっていく。
ユノの留守中にできるだけ部屋を整理整頓して掃除機をかけて、かなりスッキリさせた。
「わ、…ユノ、廊下の真ん中に荷物置かないでよ。」
出来上がったサラダをリビングに持っていこうとして足に当たったユノの荷物。
あんまり棘が立たない言い方をしたつもりだったのに、ユノは今の私の言葉に少しだけ不機嫌そうに目を向けてきた。
「、俺のいない間にあっちこっち触りすぎ。どこになにがあるかわからなくなっちゃったじゃん。」
「……お言葉ですが。部屋が汚いから掃除をしたまでなんだけど。」
「俺は自分がわかるように置いてたのに…」
「一応、私もここに住んでる人間なんです。汚い部屋のままが嫌だったから掃除したの。ユノももうちょっと部屋を綺麗に保つことを意識して――」
と、言ってる傍から、あれこれ探し出してるせいで物が出しっぱなしになり、また散らかり始めてしまった。
この人、私の話聞いてない。
「ちょっと、もの出しっぱなしにするのやめてって言ってるじゃん。」
「時間ないんだって……あれー、…くそ、ない。」
私の言葉を気にかける様子もなく、自分の部屋に駆けていくユノ。
自室でもいろいろと物を出しまくっているらしい音が聞こえる。
せっかく掃除したのに……
「ー!リビングから黄色のファイル持ってきてー!」
「……はあ。」
ムッとしたけど、落ち着け、落ち着けと自分に言い聞かせて本棚からファイルを取って渡しに行く。
私夕食作ってる最中なんだけど…
それに家政婦じゃないんだから、手足に使ってほしくないんだけど。
文句の一つでも言いたくなったけど、なんだか不機嫌そうなユノにそんなこと言ってめんどくさくなるのもいやだし。
部屋から出てきたユノにファイルを突き出してやった。
「え、違う、これじゃない。」
せっかく持ってきてあげたのに、私からファイルを奪い取って再びリビングに駆けていく。
黄色のファイルって言ったから持ってきてあげたのに、これじゃないって、なんなの!?
黄色いファイルってあれしかなかったけど!
「こっちだよ、こっち。」
「それ黄色じゃないじゃん、クリーム色じゃん!」
「はあ?…どっちでもいいだろ。」
バタバタと忙しなく動き回るユノは、ありがとうの一言も発さず。
頭にきた私は無言でキッチンに戻り、夕食の支度を続行する。
「じゃあ俺行ってくるから。」
顔も出さず玄関のほうから聞こえた声に、シカトで送り出すとしばらくしてドアの閉まる音が聞こえた。
ああ、頭にくる。
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2014.8.12