7.これ以上、
あれから私はいつの間にか寝入ってしまっていて、再び起きたときにはカーテンの外の明るさがわかるくらいの時刻になっていた。
ユノはもうこの部屋にはいなくて、仕事に行ったんだろうなと少し安堵する。
自分勝手な都合だけど、顔を合わせるのはどうしても気まずかったから。
体を起こすといつの間にか額に乗せられていたタオルが落ちてきた。
改めて触ると、まだ冷たい。
濡らしてまだそんなに時間が経ってないってこと?
「。」
ドアがノックされてユノが入ってきた。
あからさまにぎこちなさを露呈させてしまう。
いないと思っていたのに。
そんな私を気に留めることもなく、ベッドの傍まで椅子を持ってきてユノが腰掛けた。
有無を言わさず額に手を当てられる。
手に持っていた濡れタオルを取られて、私は手持ち無沙汰になる。
何を言えばいいのかわからなくて、ただ黙りこくっていることしかできなかった。
ユノはキッチンから水を持ってきてくれて、再びベッド脇の椅子に座る。
「俺、スキャンダルがどうとかそういうことは気にしてないよ。」
何の話かと思いかけて、昨日の自分の失態を思い出す。
「連絡取れなかったし、最近変質者多いって聞くからさ。無事にちゃんと帰ってくるか、心配だっただけ。」
「……。」
「まあ、契約で過干渉しないことってなってるしな、昨日は悪かった。」
目線は私の持つコップに向けられている。
そう言うなり、ユノも言葉を発しなくなった。
部屋にはただ沈黙が流れるだけ。
なんでユノはこういうときにも自分から謝るんだろう。
勝手にカッとなって勘違いしてキレたのは私のほうなのに。
それに、まさかユノが純粋に心配してくれてたっていうのに少し驚いてしまった。
それじゃあまるで、
「今日、俺一日オフだからさ。何かあったら呼んで。ゆっくり休んで、早くよくなれよ。」
大きな手のひらが頭を撫でる。
去り際に振り返ることはなく、静かにドアが閉められた。
心臓の鼓動が明らかに速くなっている。
これは熱のせいでもなんでもない。
こんな感覚、風邪のせいなんかじゃない。
契約で一緒にいるだけの関係なのに、私たちの関係は偽りなのに。
今更惹かれて、好きになったって。
「…ほんと、なにやってるんだろ…。」
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2014.8.12