10.改めまして。
「正式に、俺のお嫁さんになってください。」
抱きしめられたまま耳元で言われた言葉に、とても胸がくすぐったくなった。
偽装結婚から始まった私たちの関係は、ここで改めて正式な婚姻関係を結ぶことになる。
書面上では立派な夫婦だけど、実情はここから、ゼロスタートなんだ。
「結んだ契約も全部破棄だ。本当の夫婦として、これからも一緒に過ごしてほしい。」
「私のほうからも、よろしくお願いします。」
その言葉を聞いたユノは、ニコニコしながら廊下に置きっぱなしの荷物を漁り始めた。
帰ってきたときからやけに多いなあと思ってたんだけど、何をそんなに持って帰ってきたんだろう。
広げたスーツケースから取り出して、私の元に戻ってきたユノが両手に抱えていたものは、
「ユノ、それ――」
「ウエディングドレス。俺のために着てくれないか。」
純白でしなやかな曲線を描いているドレスは、ユノの手の上で輝いているように見えた。
驚きと感動で言葉を出せないでいる私に、ユノは照れくさそうに話す。
「結婚式してないし、当分できないだろうからさ…断られること考えないで、勝手に作っちゃった。どうしてものドレス姿が見たくて。」
「……うそ、」
「似合うだろうなって、そればっかり考えてた。…着てくれる?」
涙で前が見えなくなって、顔を覆ってしゃがみこむ。
声を殺して泣いていると、ユノが抱きしめるようにして背中を擦ってくれた。
優しい声音は囁くようにして言葉を紡ぐ。
「二人だけの結婚式をしよう。」
渡されたウエディングドレスは驚くほどぴったりだった。
恥ずかしさでいっぱいになりながらリビングに戻ると、そこには黒いスーツを着たユノが窓から外を見つめていた。
「似合う、かな。」
「……すごく綺麗だ。」
自宅で、誰もいない二人だけの結婚式。
恥ずかしい思いもありながら、とても幸福で満たされた思いがする。
ヴェールを捲って、両頬を包まれると息が詰まった。
すぐ近くにはユノの顔。
優しい私の旦那さま。
「を幸せにすることを誓います。」
優しく落とされる口付け。
静かな部屋にいるせいか、まるで二人きりの世界にいるような錯覚に陥る。
長く続くキスのあと、ユノが急に涙をこぼして笑うから、私もつられて泣いてしまった。
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2014.8.12