「、買い物行こう。」
オフの日が来た。
この前の言葉通り、家でゆっくりするつもりだったらしい。
俺の言葉に皿洗いの手を止めて、驚いた顔をしてこっちを見ていた。
12.休日は二人でお買い物
「ねえ、本当に平気なの? 人の多いところなんて、芸能人はすぐ囲まれちゃうんじゃない?」
「そんなに心配しなくて平気だよ。」
車でドライブがてらにアウトレットへと向かう。
は「私に気遣ってデートなんてしなくていい」なんて言ってたけど、俺がとちゃんとデートをしたくてちょっと強引に連れ出してきた。
恋人期間もなにも経てない俺たちだからこそ、そういうことをと思い出として残したくなる。
それをに直接言ったら、意外、と笑われてしまった。
「せっかくのデートだし、そんな心配することないから。楽しもうな。」
「…うん、そうだね。ダメそうだったら、帰ればいいしね。」
着いたアウトレットはなかなかの賑わいを見せていた。
俺ももじっくり買い物をすることが久々で、お互いの見たい店を見つけては入って吟味して、似合う似合わないと言い合いながら買い込んだ。
両手にいろんな店の袋を提げて、時計に目をやればもう昼時。
一度車に荷物を乗せに戻ってから、二人でイタリアンレストランに入った。
「意外に平気なもんなんだね。こういうところに来ても。」
「だろ?」
心から楽しそうに笑っているを見て、改めて幸せだなと実感する。
向かい合った席で談笑したり、クレープを買って分け合ったり、たまたま来ていたパフォーマンス集団を見たり。
時間の経過が早すぎるほどに感じて、「楽しかった」と言葉にするに少し切なさを覚えた。
学生のように別々の家に帰るわけでもないのに、夕陽に照らされるの笑顔を見ると言葉に詰まる。
ここまで初々しいような感情をこの歳になって持て余すとは。
「ねえ、あれって東方神起のユノじゃない?」
「ってことは、隣にいるの奥さん?」
「やっぱり、ユノに似てるよねー……。」
「そうかな?そっくりさんなんじゃないの?」
「わ、ユノだ!!握手してもらおうかな――」
「やめときなよ、あれ奥さんだよたぶん。邪魔しちゃ悪いよ。」
「握手くらい平気じゃん?」
喧騒の中でもはっきりと耳に届いた、女の人たちの声。
の顔が真顔になって、俺に振り向く。
「…、手、出して。」
「……なんで?」
「なんでって、繋ぐから。」
「え、周りに気づかれてるよ、」
「関係ないよ。結婚したのは公表してるんだし。…ただ囲まれるのは困るから、ちょっと早歩きで車まで戻ろう。」
「っ、ユノ――」
あの、と近づいてくる女の子が見えて、俺は急いでの手を取ってその場を離れた。
困惑した表情のが一生懸命歩く後ろには、俺たちを追いかけようとしてくる集団が出来上がっていた。
軽く黄色い悲鳴も上がっている。
「、走れる?」
「え、うん……ふふ、なんか、これはこれで面白いね。」
「余裕じゃん。走るぞ!」
さっきまで困りきった顔してたくせに。
今はちゃんと俺の手をぎゅっと握り返してくれている。
俺が手を引くよりも早く、隣まで間を詰めてきて、
「なんか、ドラマみたい。」
そう言ってはにかんだ。
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2014.6.3