You're so curious!
「ユノはバイクで人を乗せて走ったことある?」
「あるよ。」
「女の人乗せたことある?」
「……ん、あるけど。」
いきなり何を言うのかと思えば、ユノの心情を乱すような話を持ち出す。
顔色を窺うように横目でを見ると、当の本人はユノの想像していた表情とは違い好奇心に満ちた顔をしている。
いったい何に対しての期待を抱いているのか、よくわからないユノにとってはますます混乱の要素となる。
「どれくらい前に?結構昔?」
「たぶん、……10年前、とか。」
「10年かあ。覚えてるかな……」
「なんで急にそんなこと聞くんだ?」
会話をしていたかと思えばいきなりブツブツ呟き始めたりと、今の名前は余計に読めなくなってくる。
お互いにまだ出会ってもいない時期のことを、根掘り葉掘り聞きだされるというのだろうか。
「ユノが女の人を後ろに乗せたときさあ?」
「う、うん。」
「女の人は、危なくないようにユノに抱き着くわけじゃん。」
「……うん。」
返答するユノの声色が少し低い。
今になってそんなくだらないことで嫉妬されるのか、という焦燥は顔にはっきりと表れていた。
昔の女性関係の話ほどめんどくさく厄介なものはない。
もし過去の恋愛について問い詰められたら、どのように回避しようか。
ユノはぐるぐると頭を巡らせる。
そんなことは知りもしないは、若干ソワソワしながら次の言葉を吐き出した。
「そういう時ってさあ、当たるよね……」
「は、何が?」
「胸。」
「…………。」
心なしかの瞳が輝いているように見える。
本当に、いったい何に期待をしているのだろうか。
返答に困り黙りこくっていると、はやや興奮しながら身を乗り出して熱弁しだす。
「だって、密着するじゃん!お腹のほうに手を回したりしたら、そりゃもう当たるよね!ね、どうだった?」
「いや、何の話――」
「すっっっごい気になってたの!バイク乗る人って、やっぱそういうおいしい経験とかできるわけでしょ!?」
呆れてものも言えないユノとは対照的に、は照れ笑いをしながらああだこうだと口を開く。
確かに、バイクに乗っていた頃を思い返せば、自身もドキリと胸を鳴らしたことがあったかもしれない。
若かったし、男であれば誰もがそうなるであろうと思う。
の発言によって、薄れかけていた記憶が少しだけよみがえりはしたが、だからといってどうというものでもない。
そしてそれを「はいそうですね」と軽く肯定する気もユノには起きなかった。
むしろ、先ほどまでの杞憂はいったいなんだったんだと、肩を落とさずにはいられない。
「ユノもそういう”おいしい経験”したことあるでしょ?」
「……それを聞いてどうするんだよ。」
「どうもしないよ、ただ気になっただけだから。」
なぜこんなことを気にするのか、一瞬問い詰めたくなったものの後々のことを考えて断念する。
ここで初めて、ため息をつく。
「、それで嫉妬とかしたりしないの?」
「えー?」
「俺がそういう”おいしい経験”をしてたとして、それを知ってが嬉しくなるわけじゃないだろ?」
「うーん……ラッキースケベうらやましいなあ、とは思うだろうけど。」
「(ラッキースケベ……)」
噛み合っているんだかいないんだか、訳の分からない会話にユノは再び深くため息をついた。
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2015.10.4
なんでこんなの書いたのか私もよくわかりません(笑)