「ま、マジでいってんの……?」


「俺がこの状況で冗談なんか言うか?」


「…………、でも…」


「いいから早く脱げって。風邪ひきたくないだろ?」




水分をたっぷり含んだ衣服に手をかけて、ユノは私の耳元に口を寄せた。



彼の手はゆっくりと、

私の服のボタンを一つ一つ丁寧にはずしていく。





「意識しすぎだよお前。」


「そ、んなこと言ったって――」


「手、邪魔。」




ついに恥ずかしくなって、私はユノの手をつかんでしまった。


ユノは私を見つめながら、同じように私の手を握り返してくる。




遥かに大きなユノの掌。


私の手をあっという間に包み込み、ニヤリと不敵な笑みをこぼした。




いつもは見せないユノのそんな顔に、


思わずゾクッとしてしまう。





「期待してるんなら、応えてやってもいいけど…」





そう言うと、


掴まれていた私の手に、

ユノがキスを落とした。




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10.12.03

アダルティーな感じでSなゆのが書きたかったんです。
結果Sにはなりませんでした残念。




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いつも、都会はいいなーって思ってた。

こんな田舎じゃ、得することなんて…自然がいいってことくらいしかないじゃんって。

早くひとり立ちして、都会に出て、田舎のとは違う生活を味わいたいって思ってた。


だけど、こんな田舎にいても、いいことがあった。



「(爆睡してる……全然起きない。)」



聞いて驚け。

なんとなんと、あの人気アイドルのメンバーであらせられる”ユノ”が、私の肩にもたれてぐっすりと眠っているのだ。


何度も頬をつねって確認したけど、これは夢じゃない。
私の妄想でもない。

全て、ノンフィクション。現実の出来事である。



私がいつも利用してるこのローカル線は、地元以外の人間が乗ることはまずないような超ド級のローカル線だ。

そのローカル線に小1時間乗り、少しだけ都会の雰囲気を味わえるような場所に位置する学校に毎日通っている。
(本物の都会と比べたら、学校がある場所もまだまだ田舎だ。)


今日もその学校の帰りで、座席に座るとすぐ眠くなってしまう私はわずか乗車一分で眠りに落ちた。

普段なら終点の地元駅まで起きることがないのに、今日はなぜか目を覚ましてしまった。
終点までまだ20分くらいはある地点で。

本当に、私にしては珍しいことである。


目を覚ましてすぐに、右肩に乗る結構な重量に気づいた。

「おっさんだったら思いっきり肩を揺らしてやろう」と思っていただけに、チラッと横目で顔を盗み見たときには心臓が止まるかと思った。


だって、まさか、テレビを通してでしか見る事のできない人間が、私の肩に、か、顔を、頭を、乗せているなんて!!


死ぬかと思った。本当に。今も、死にそうなくらい、緊張してる。



「(ああ神様ユノ様仏様ありがとう、ありがとう。私はこの田舎を見捨てません。ここは私の愛すべきふるさとでございます。)」


幸か不幸なのか、いやこれは絶対幸だな、この車両にはなんと私とユノの2人しかいない。

どんなに周りを見回しても、この車両には、私とユノの2人だけ。(大事なことなので2回言いました。)


さすがローカル線、とでも言うべきか…


今をときめく大スターと、密室空間で2人っきりなんて、一体誰が想像出来たろう?

一生分の運を使い果たした気分。
幸せすぎて気持ち悪くなってきた。



後20分弱、私の命がもつかどうか。

幸せを噛み締めながらも頭の片隅でそんなことを思わずにはいられない私であった。




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2011.7.2

サイトに遊びに来てくれています、華奈嬢とのやりとりから派生した「電車の中でメンバーが隣だったら」ネタ。
ゆのさんに電車に乗っていただきました。
隣に座られたらドキドキしちゃうよね!っていうお話をしてまして。
これネタにできそ〜、みたいな(笑)

ゆのは腕組んで結構リラックスして寝そうだよね。




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『今年も一人かなー。』



電話の向こうで、突然ポツリと呟いた彼女。

その言葉を聞いてすぐに、彼女が言わんとすることがわかってしまった。


『ね、ユノくん。どうなんでしょう。』

「……たぶん、お前が今考えてるとおり、だと思う…。」

『あっちゃーやっぱり今年も一人か!どうしよう、周りの子はリア充ばっかりなんだけど。私遊んでもらえないなー。』

「……ごめんな。」

『またそうやって謝るんだからー。なによ、クリスマスったってただの休日じゃない。気にしないの!』



携帯を使ってテレビ電話もできる時代だというのに、俺たちは未だに、一度もテレビ電話を使って通話をしたことがない。


顔を見たら会いたいってわがまま言っちゃうからダメ。


そう言って、頑なに拒まれているからだ。

それくらいのわがままだったら言ってもらっても構わないと思う反面、現実はそんな可愛いわがままでさえも聞き入れてやれない。


理解がある彼女には本当に感謝してるけど、このままじゃ、幸せにしてやれるのは一体いつになるのかわからない。



「なあ…」

『んー?』

「………会いたい。」

『…ユノがそれを言っちゃうの。…うん、私も会いたい。会えるの?』


堪えきれないほどの"好きだ"という想いが、俺の中にあった器から溢れ出て言葉になった。


彼女が今まで言うのを我慢していたであろう一言を、容易く俺が言葉にしてしまった。

なのに、あいつは電話の向こうで微笑んでいるらしく、声音の明るさに俺の心は幸せで満たされる。


「俺が、さらいに行く。」

『…なに、そのクサい台詞。』

「サンタになって、お前をさらいに行く。」

『サンタさんはよい子にプレゼントをあげる側の人だよ。人さらいなんてサンタさんのすることじゃないじゃない。』

「たまにはサンタだってもらう側になりたいんだよ。」

『あはは、しょうがないなー。じゃあ家の窓開けてサンタさんの襲来を待ってようかな。』


訳のわからない会話にも笑って付き合ってくれる。


本当に、今すぐにでもさらいに行きたい。

それを告げると、珍しく彼女が『じゃあ今すぐ来て。』と、可愛らしいわがままを言った。

いつもは俺に気を遣ってばかりの、彼女の本音。



ありったけの俺の想いを込めて、やり場のない感情を言葉にのせて送る。

それを聞いて、すごく幸せそうに笑ってくれた大切な人を、一生離さないと心に誓った。



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2011.12.1




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「子ども体温。」



ベッドの中で、ぎゅううぅっと音がするんじゃないかってくらい、抱きしめられた。


寝起きの身にはちょっと辛い仕打ち。



「ユノ、いたい。」


「あー…ったけー。」


「ユノ、いたい。いたい。」


「はあ…幸せだ。」



まったくかみ合っていない私たちの会話。


長身の身体を丸めるようにして抱きついてくるユノ。

彼に全ての体温を持っていかれるんじゃないかと思うほど、ユノの身体は冷たい。


子ども体温最高ー、と呟いている。



「子ども子どもって、私、きみより年上ですけど?」


「ねーさん、痛いです。」



少し爪の伸びた指で、ユノのほっぺたをつまんでやる。

いつもはしっかりしてるこの男のヘラヘラとした笑顔は、なかなか面白いものだ。



「ユノくん、鼻の下が伸びてますよ。」


「しょうがない、これは生理現象。」


「ユノくんの大好きな私と一緒にいるから?」


「そうです。」


「……しょうがないなぁ。」


「だろ?」



ユノのドヤ顔が面白くて、思わず吹きだしてしまう。

そんな私の頬を、仕返しといわんばかりにつまむユノ。


「こんなに可愛くて、愛しくてしょうがない年上がいるなんて、ぼくは思っていませんでした。」


「私も、年下はみーんなひよっこだと思ってました。でもユノはひよっこじゃなかったです。」


「はは。…すっごい好き。」


「なによ、いきなり。まあ、私もすっごい好きだけど。」


今まで付き合ってきた誰よりも、ユノが一番で、私は嬉しい。


こうして今日も、幸せな一日が始まる。



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2012.1.19

あまーいお話が書きたかったんですけど、

眠いのと深夜のテンションとでぐだぐだ、ですねぇ。





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「人助けだと思って…お願いします!」


テーブルに頭をぶつけるんじゃないかってくらい勢いよく頭を下げる、私の前に座る男の人。
私が何も言わないから、彼はずーっと顔面をテーブルスレスレのところで止めている。

何か言ってあげればいいんだろうけど、私の中で彼の今の言葉と、その前に頼まれたことの意味が合致しなくて言葉を発することができない。
そもそも彼は言葉の選択を間違っているのだ。
人助けという使い方を間違っている。


人助けでほとんど面識のない男の人と、


「…やっぱり、結婚はできません。」


結婚してくれというのはとんでもない話だとつくづく思う。



私が断りの言葉を、バリエーション豊かに再三投げかけているにも関わらず、目の前に座る男は諦めることをしない。
俺が諦めることを諦めろ、ってことだろうか。冗談じゃない。


「ご迷惑はかけません、資金もすべてこちらで用意しますしーー」

「あの、そういう問題でなくて…」

「お願いします、どうかユノと結婚してやってください!」

「……(話にならない。)」


テーブルにおかれたコップを掴んで、水をぶっかけてそのまま帰ってやりたい。

そうできないのは、私にそんな度胸がないからだ。
もし追いかけられたら捕まるのは目に見えてるし、そしたら何がなんでもいうことを聞かされるに違いない。


とんでもない面倒ごとに巻き込まれてしまったと、私は男に向けてあからさまに肩を落とした。



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2012.10.30




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「――、…一緒に寝かしておけばいいよね。」

「ちょっと心配だけど…まあ酔いつぶれてるだろうし、大丈夫でしょ。」


うっすらと声が聞こえる。
ジュンスとジェジュンかな?

聞こえてくるのは少し遠くから。

ぼーっとする頭がだんだん覚醒するのを待っていると、パタンと音がして二人の会話がプツリと途切れてしまった。

意識がはっきりして、その音が扉の閉められたものだと認識するのに時間はかからなかった。

私が寝かされているこの部屋は真っ暗で、目を開けていてもなかなか暗闇に目が慣れてくれない。


なんで私、寝かされてるんだっけ。

思い出そうとして、でもそんなに記憶をたどる必要もなく、すぐにさっきの場面が頭の中にフラッシュバックした。

もともと5人と一緒に飲んでて、いつもはお酒に強いユノが今日は真っ先に潰れちゃって、それからは4人と一緒に飲んでたんだ。
ジェジュンが作ってくれた美味しいおつまみを肴に、ユチョンがイチオシの洋楽をBGMにしてワイワイ楽しくやっていた。
…んだけど、調子に乗って飲みすぎたのか急に気持ち悪くなっちゃって、みんなに介抱してもらってたんだった。

で、気づいたら今。
私はベッドに寝かされている、らしい。

いつの間にかちょっとだけ眠ってちゃったんだ。
起きたらみんなに謝らなきゃ。
とりあえずもうちょっとだけ休ませてもらおう…

そう思って布団を掛け直していると、突然お腹に何かが触れてきた。
背後から、するっと。

ビックリして変な声が出そうになるのと同じタイミングで、耳元に「しっ。」と少し鋭く空気が触れた。


「…その声、ユノ?」

「大きな声出すなよ、気づかれるから。」


思わず頷いちゃったけど、よくよく考えてみればこれすごい状況だよ…

ユノと同じベッドに寝かされてたってことだよね?

同じ方向を向いているユノと私。
ベッドの中で、ユノの手が私のお腹周りを這うようにしてきゅっと抱きしめてきた。
なんとなく心に漂う背徳心。

だって、私とユノはこんな密接に触れ合うような関係じゃない。


「気づかれるって…同じベッドに寝かせてくれたのは、ジェジュンたちだよ?」

「あいつらは俺たちが寝てると思い込んでる。」

「あ、そっか。」


こんなに近い距離にいるのに、お互いヒソヒソ話で会話をする。
お酒のせいで上がったんだろうユノの体温が体全身に伝わってくる。


「…なんで、ユノは私を…だ、抱きしめてるの?」

「人肌が恋しいから。」

「…でも、…なんか、触り方が…」


モゾモゾ、ゴソゴソ。
布団と衣服の擦れる音がする。

ユノの手がなぜかいろいろ這い回って、触り方が怪しくなっている。
抵抗しようにもあんまり激しく動くとみんなに気づかれるんじゃないかと、思うように動けない。
そんな私の心配をよそにユノの手は遠慮を知らずに動き回る。


「酔ってるんだね?」

「まさか。」

「嘘つき、酔いつぶれてみんなにここまで運ばれたんじゃん…!」


いつの間にか組み敷かれていて、はっとする。
このままだと良くない、絶対に良くない。


いつの間にか組み敷かれる状態になっていて、ユノは私をじっと見下ろしていた。

どうにかしなきゃ、と思うのになんでか動けなくて、気持ちだけが焦っている。
横腹にひやりとした空気が触れたかと思うとすぐに熱を持ったものが触れてきた。

ユノが笑っている。
熱を持ったユノの手が、私の腹に直接触れて柔く撫で回す。

低い声で名前を呼ばれて、どうにかしなきゃと思ってるのに私の喉からはかすれた声とも言えないものしか出てこなかった。


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2012.12.4